欧州の冷ケース企業買収

 ダイキン工業は、欧州の商業用冷設市場におけるリーディングカンパニーのAHT社(オーストリア)を買収する。買収価格は8億8100万ユーロ(1ユーロ=130円換算で1145億円)。子会社のダイキンヨーロッパ社(Daikin Europe N.V.、ベルギー、三中政次社長)を通じて、AHT社への出資者であるブリッジポイント社(イギリス)から全株式を取得し、必要な手続きを経た上で、2019年1月に買収を完了する予定。

事業領域拡大、トータルコーディネートへ

 同社は、戦略経営計画で重点施策のひとつに商業用冷設事業の拡大を掲げている。欧州は世界で2番目の市場規模があり、省エネ・冷媒に関する環境規制が追い風。欧州では2000年以降、スーパーマーケットやコンビニエンスストア向けの省エネ性の高い冷凍・冷蔵システムの販売を強化してきた。加えて、16年にイタリアの業務用冷凍・冷蔵機器メーカーのザノッティ社を買収し、食品の加工・貯蔵庫向けの産業用、海上コンテナ用や陸上のトラック・バン向けの輸送用冷凍機など事業領域を拡大。しかし「コールドチェーンで最も顧客と接点の多いショーケースはなく、戦略的な補強が求められていた」(同社)。
 AHT社は、スーパーマーケット向けに展開している冷凍・冷蔵ショーケース専業メーカー。冷凍ユニットが内蔵されているタイプのショーケースではナンバーワンのシェアを誇り、店舗の形態に応じた新商品を積極的に投入し、市場をリードしてきた。さらに、店舗設計のノウハウと高い技術力を活かしてグローバルでチェーン展開する大手の有力顧客を持っている。
 今回の買収により、AHT社が持つショーケースが商材として加わることで、同社が持つ空調と冷凍・冷蔵機器の幅広い製品群をもとにした商品・サービス、新たな省エネ・環境ソリューション、さらには快適な買い物空間のトータルコーディネートに至るまで、ワンストップで顧客に提供できるようになる。「欧州で事業基盤を固め、北米はじめ経済成長が著しく冷凍・冷蔵のニーズが急激に伸びるアジアにも挑戦する」(同社)考え。