「世界一のバウムクーヘンを」、焼成機を内製化
ユーハイム 中央工場(上)

 ユーハイムの中央工場(愛知県安城市)は「世界一のバウムクーヘンをめざす」(矢島春信工場長)ため焼成機などを工場で内製化している。単に生産機械を購入しただけでは、「同じものが他でも作れてしまう。それでは世界一にはなれない」(同)という。工務部隊が活躍する場が広がっている。

     矢島工場長

 中央工場の生産アイテムはバウムクーヘンとビスケットがメイン。同社の洋菓子は贈答用として好まれており、中元や歳暮の時期は特に忙しく、生産量は11〜12月にピークを迎える。
 通常商品に加えクリスマスやバレンタインなど、数々のイベント関連の商品を多数生産している。近年はハロウィン向けの商品が伸びてきており、工場でも10月に入る頃には準備に万全を期さなければならず、年末の繁忙期が前倒しになってきているという。
 創業当時から「体のためになるからおいしい」を哲学として守り続け、不必要な添加物を一切使用せず、自然の素材のおいしさを追求。贈答用は購入した人だけが関わるだけではなく、受け取った相手にも気持ちを届けなければならない。その思いが緊張感を最大限にして生産に取り組むことができた。数多くある取引先との関係を通じ、「品質を高めるのに鍛えられた」(同社)と振り返る。

「他にないバウムクーヘンを」と機械製作に精を出す
製造課と設備技術課のスタッフ

 商品の価値や品質を高めるためには、おいしさを追求することはもちろんだが、生産過程での正確性を高めることも配慮しなければならない。
 生産過程で発生するロスは商品にならずに廃棄しなければならないので、環境面だけでなく、コスト的にも問題となる。それを解消するため、ロスとして出てしまうものを減らすこと、つまり歩留まりを向上させることに余念がない。「入荷した原料は100%商品化することをめざしている」と矢島工場長は全スタッフに働きかけている。
 「これを可能にするには技術の進歩にどれだけ関心が持てるかだと思う。製造課のスタッフには、自分たちが操作している生産機械がどういう“考え方”のもと作られたのかをイメージしてほしい」(矢島工場長)。
 そうしたスタッフ全員がイメージしたものを形に変えるのが、設備技術課の重要な役割。同工場ではバウムクーヘンのオーブン(焼成機)を内製化している。世界一のバウムクーヘンを作るためには、それを作る機械を自分たちで作ることができなければ実現しないとして、矢島工場長が赴任した10年ほど前から着手している。
 “ユーハイム製オーブン”はバウムクーヘンの生産量が増えてきたときに製作に取りかかる。これまでに20台以上製作した。内製技術を生かし、より良い商品ができるように様々な改造も行なっている。
 設備技術課のメンバーは現在9名。今年は新入社員1名が加わり、実践の中で技術力を研磨している。
 製造課のスタッフがイメージしたものを設備技術課のスタッフが知恵を出し合い完成させた焼成機で世界一のバウムクーヘンをめざす――。修理や保守など単調になりかねないルーチンな日常を感じさせない、それを覆すような、やりがいとプライドが持てる仕事で「人材」が日々育っている。

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2011年11月2日号掲載