米飯向け国産米の長期的な調達に向けた取り組み

 西日本旅客鉄道神明は、SCI、ファーム・アライアンス・マネジメントと協力し、弁当やおにぎりなど米飯向けの米の流通で、安全安心な国産の米を長期的に調達する取り組みを開始する。それにあわせて、この取り組みに賛同する米生産者を募集する。
 国産米を取り巻く環境は、減反政策の廃止による補助金廃止、生産者の高齢化、外国産の安価な米の流通などにより、米生産農家の転作や廃業が懸念されており、長期的には調達が難しくなる可能性がある。
 JR西日本と神明は2014年の業務提携以降、地域農業の再生と活性化に向けた取り組みを行なってきた。今後は国際認証のグローバルGAPに対応する生産情報管理システムの供与などを通じて生産者の生産性向上に取り組んでいるファームアライアンス、弁当やおにぎりなどに国産の米を必要としているSCIと一緒に、国際基準を満たし、米飯利用に適した国産米の生産維持・拡大を図るとともに、米生産者の経済性と国際競争力の向上をサポートする。
 具体的な取り組みとして神明は、同社が持つこれまでの取り組み産地との連携で得た知見を活かしながら、「ゆうだい21」を始めとする弁当やおにぎりに適した米の精米、保管、大規模農場の開拓などを行う。
 ファームアライアンスは生産者の求めに応じて、生産情報管理システムの提供とグローバルGAPの取得支援を行い、農業経営の見える化と国際競争力の向上をサポートする。
 生産した米については、多様なルートを産地とともに適宜構築し、集荷・物流の最適化を図った上で、原則として神明が全量を買い取り、SCIのサプライチェーンを通じて弁当やおにぎり商品として販売する。
 今後は来年の春に作付けし、秋以降にコメの流通を開始する考え。

 グローバルGAPは欧州を中心に世界100カ国以上で実践されているGAP(適正農業規範)の世界標準。グローバルGAPでは、農業生産、取り扱いにおける農産物の安全管理手法や労働安全、持続可能な農業を行うための環境保全型農業実践のためのチェック項目を具体的に定めている。農産物の世界的な流通では、グローバルGAPの認定取得が取引条件となっており、サプライヤーとして「選ばれる」ための必須要件になっている。
 欧米では事業リスクを最小化することが小売事業者の標準的な動きになっており、小売業売上高世界ランキングのトップ10にあるような量販店は、グローバルGAPのような国際的な認証規格を取得しているサプライヤーや生産者からの仕入れを優先しており、自らの販売チャンネルでリスク・ヘッジができない農産物の取り扱いを排除しはじめている。
 グローバルGAPは2011年に改訂され、農産物の集出荷・選果場の管理範囲が審査の必須要件となり、農場から出荷までを網羅したサプライチェーン全体のマネジメントシステムを評価することで食品安全リスクを包括的に担保するようになった。
 日本での認証取得実績はまだ少なく、規模だけでなく、農産物の安全管理も途上段階であり、中国、韓国、東南アジア諸国と比較しても、日本のこの分野での取り組みが期待されている。