村岡社長
冷凍とろろなど山芋の加工品市場で国内シェアトップのマルコーフーズ(埼玉県深谷市)は加工品の市場拡大に向け、山芋を使った新メニューの提案など用途開発に積極的に取り組んでいる。村岡守社長は「山芋は業務用、市販用とも用途開発が青果物の中で最も遅れており、このままでは市場は先細る」と懸念し、これまで手付かずだった国内需要の掘り起こしを強化する考えを示す。(取材は3月上旬)。
――原料は国産にこだわっている。年間の生産量はどれくらい?
村岡 山芋は大和芋と長芋に大別されます。大和芋は埼玉、千葉、群馬、長芋は北海道、青森、長野などから調達しています。
生産量は製品ベースで年間4500t。主要製品は大和芋や長芋をすりおろした冷凍とろろが約85%、ダイス、乱切りなどのカット品、粉末がそれぞれ約5%を占めます。
このほか、冷凍の味付けとろろやオクラ、モロヘイヤ、なめこのミックス品などを揃えています。販路は加工用と業務用で約65%、リテール用が約35%です。
――2020年4月期の業績予想は?
村岡 決算期を10月から4月に昨年変更したため、単純比較はできませんが、4月期の売上げは前年比98%と微減の見込み。商品の整理や昨年の冷夏で冷やしとろろそばの売上げが伸び悩んだことが影響しました。ただ、本格的な夏が1カ月しかなかった状況で昨年並みの数字を確保できたことは上出来です。
国内マーケット全体の需要動向は今のところ安定していますが、中国産が増えているのが気がかり。中国産と競っても価格で負けるため付加価値を高める必要があります。
つけ麺用の「とろろつけ汁」
――数年前から外食業向けに、冷凍とろろを使ったメニュー提案を本格化している。
村岡 焼肉店向けに開発した「とろろ焼肉のたれ」は滋養強壮の効果が期待できます。
ラーメン店向けにはつけ麺用の「とろろつけ汁」を開発しました。とろろを使うことで油脂分がなくても麺がよく絡まり、のど越しが向上します。さらにカロリーを大きく抑えることができる。味のバリエーションはごま・しょう油・塩・豆乳の4種類。冷凍のワンポーションにしており、味のバラツキや食品ロスを防ぎます。
このほか、パスタと冷凍とろろを和えたカルボナーラ風、マカロニの代わりにきざみとろろを使ったグラタン、台湾で人気の山芋ジュースにヒントを得た山芋スムージーなども提案しています。
――確かに山芋は薬膳効果があるとされ、中国や台湾では人気が高い。
村岡 最近は日本でも山芋に多く含まれるレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)が注目を集めています。腸内環境を整えて免疫力を上げるなどとしてテレビでも紹介されました。外食店は山芋をメニューに取り入れることで、他店と差別化が図れます。
冷凍とろろと和えた「カルボナーラ風パスタ」
食物繊維が豊富な「山芋スムージー」
――用途開発は業務用にとどまらない。
村岡 「長芋とオクラとモロヘイヤのみじん切り」、「粗ずりシャキシャキとろろ」、「味付きとろろ(国産大和芋)」、「とろろ(国産長芋60g)の4アイテムを新たに開発し、量販店向けに提案を開始したところです。
生鮮の長芋は皮をむく不便さや生ゴミ処理の面倒さがあり、若い人は購入をためらいがち。一方でコンビニの冷凍とろろパックは人気が根強い。そこでフローズンチルドの小容量パックにしました。下処理済みで、賞味期限は解凍後9日間。売場で簡便性や食品ロス削減を訴求できます。
――簡便性をうたった市販向けの加工品は新機軸だ。
村岡 皮をむいたり、刻むなど山芋を料理する家庭はいまや少ない。その手間を当社が引き受ければいい。そこで今回は青果売場や鮮魚売場の棚をねらっています。鮮魚売場ではまぐろの山かけ以外に、海鮮丼やちらし寿司などのメニューを提案していきます。
山芋は業務用、市販用とも用途開発が青果物の中で最も遅れており、このままでは市場は先細ります。それに市場は確実に変化しおり、そばや和食だけを考えていたのでは取り残される。
当社は各産地の契約農家を集めて出荷組合をつくり、市場への安定供給に努めていますが、市販用、業務用とも市場拡大を通じて、こうした産地の活性化にも貢献していきます。
(むらおか・まもる)1975年2月20日生まれ。東京農業大学第三高校卒業後米国留学、2000年赤城乳業入社、04年マルコーフーズ入社、16年専務取締役、18年代表取締役社長。埼玉県出身、45歳。