洗浄機も省エネ競う時代、売上高100億円突破で勢い増す
クレオ 代表取締役社長 名倉豊夫氏

    名倉社長

 食品工場の容器洗浄機でシェアトップのクレオ(東京都中央区)は売上高100億円の大台を初めて突破し、2025年の売上げ目標150億円超をめざして勢いづく。洗浄作業の自動化・省人化に加え、最近はCO2排出量の大幅削減が大手ユーザー中心に脱炭素化のニーズに“刺さり”、機械の新規導入が進む。洗浄機も省エネを競い合う時代。名倉社長は「秘策がある」として環境配慮型の洗浄機の開発を打ち明ける。

 ――2022年12月期の売上高は?
 名倉 前期比4%増の104億円を見込んでいます。売上高の計上基準を変更したこともありますが、その影響を差し引いても昨年は苦戦しました。

 ――それでも100億円の大台は突破した。
 名倉 本来はさらに伸ばせるはずでした。計画では116億円を予想していましたが、電気部品などの供給不足の影響が想定以上に長引きました。ただ、中期経営計画(21〜25年)で掲げた最終年の売上高目標150億円超えは変更しません。目標に向かって突っ走る覚悟です。

 ――コロナ禍でも売上高は前期超えが続く。好調を維持できる理由は?
 名倉 成長が鈍化しないためには、新しい製品を絶えず追い求めていく必要があります。(20年の社長就任後に)社員全員から製品アイデアを募集し始めたのもコロナ後を見据えた新市場の開拓や新製品の開発が目的です。実際に製品化した機械もあります。

 この3年間、自分の中で考えられることはすべてやってきたと思っています。

 ――パンデミックが落ち着き、経済活動が戻りつつある。マーケットに変化は? 
 名倉 コンビニの売上げが回復傾向にある分、これまで一人勝ちだったスーパーは以前に比べて伸びが鈍くなっているように見えます。新規の投資案件も減速傾向かと思います。一方でコンビニは設備投資の意欲が高まっています。

商品の鮮度延長、部品洗浄機が貢献

 ――コンビニは主力マーケット。最近はどのような機械の引き合いが強い?
 名倉 取引先のベンダーが商品の鮮度保持期間を延長する取り組みを進めています。その一部として菌数をこれまで以上に減らす必要があり、各工程を見直す中で当社の部品洗浄機「かがやき」と、専用洗浄剤「サニタスかがやきエース」、洗浄衛生マニュアル(サニテーション)を高く評価していただきました。機械、洗剤、方法論のワンパッケージでの引き合いが増えています。 

 ――洗浄力の高さとノウハウがないと対応できないのでは?
 名倉 「クレオなら何とかしてくれる」と信頼いただいているのかもしれません。

 食材を入れる食品容器の衛生度を徹底的に高めたいという要望にも応えています。これまではコンテナや番重にビニール製のシートを敷いて食材を投入していましたが、シートはコスト高や廃プラの問題がある。これを「シートレス」にしたいという要望です。

 そこで、洗浄機の洗浄・すすぎの時間や温度を調整したり、最適な洗浄剤の選定を行ったりするほか、前工程の下洗いで食品残さをしっかり洗い流すことを指導するなどして洗浄レベルを上げ、シートレスの要望にお応えしています。

CO2排出量削減の提案を前面に

 ――顧客の課題解決に向けて、どのような提案テーマを設定している?
 名倉 洗浄レベルを高めてお客様の衛生環境づくりに貢献することはもちろん、洗浄工程をいかに省人化・自動化するかを考えて解決策を提案しています。さらに近年はCO2排出量の削減も大きなテーマとして捉えています。

 ――洗浄機でもCO2を削減できる?
 名倉 洗浄後の乾燥工程において熱風方式ではなく、CO2排出量削減につながる脱水方式を提案しています。

 コンビニ大手の配送センターでは早くから当社の機械を導入していますが、まだ導入されていなかった一部のお客様も当社の脱水方式に今期から切り替えることになりました。これによって大幅なコスト削減とCO2排出量削減が可能になります。

 洗浄機に後付けできる「排水熱回収装置」も燃料価格の高騰を追い風に問い合わせが増えています。

 さらに“秘策”があります。詳細はまだ明らかにできませんが、さらなるCO2削減につながる洗浄機の開発に取り組んでいます。
開発に成功すれば燃料のコスト削減にもつながり、間違いなくお客様に喜んでいただける製品になると思います。

食品卸や医薬品などの市場を開拓

 ――今期(2023年12月期)の売上高目標は?
 名倉 126.5億円をめざします。当社は機械、洗剤、メンテナンスが事業の3本柱ですが、機械のさらなる業績アップを目的に、新たに「機械営業本部」を昨年7月に立ち上げました。

 新市場の開拓や既存市場の深耕を目的に市場リサーチを行っています。この分野の市場規模はどれぐらいあるか、どのようなニーズが眠っているか、それに対してどのような製品を開発すればいいのかなどを探っています。

 ――市場リサーチの結果が楽しみでは?
 名倉 そうですね、新しい市場だけでなく、当社が未開拓の市場もあります。機械営業本部の担当者は当社が訪問できていなかった企業にも今後アプローチしていきます。

 今期は食品卸や乳業、化粧品、医薬品の分野の開拓にも力を入れていきます。

 (なぐら・とよお)1961年大阪府生まれ。1985年クレオ入社。大阪、東京で営業に従事した後、91年名古屋営業所の立ち上げに携わり、初代所長。2008年大阪事業部長、13年取締役。名古屋事業部、大阪事業部、九州事業部を統括。20年2月社長就任。入社当時、十分な営業カタログがなかった時代、手作りのパンフレットを持ち歩いたり、トラックに洗浄機を積んで自ら運転し、営業先を回ったりして取引先を広げてきた。その頃作った営業マニュアルは現在も社員教育用に使われている。近畿大学商経学部卒、61歳。