全自動調理のスチコン、蒸気の工夫でおいしく仕上げ

 ドイツ・ラショナル社の日本法人ラショナル・ジャパンは次世代型のスチームコンベクション・オーブン「セルフクッキング・センター」を04年から国内販売している。ホテルや飲食店、給食センターなどに加え、最近では病院や老人ホーム、保育園、製菓店などにも導入実績を伸ばしている。

質の高い料理を安定的に供給

 「セルフクッキング・センター」は世界で初めて自動調理を実現した。ベイクや焼き調理、グリル、蒸し物、煮物、野菜のボイルなどの様々な料理を1台でこなす。
 選択パネルの9つのメニューモードから食材を選択し、希望の仕上がりを決定するだけで、食材の状態、投入量、大きさを自動で感知し、機械本体が調理中も自動で微調整を加えながら、高精度に庫内の調理環境を整える。温度や湿度の設定は必要ない。
 そのため、経験の浅いパートタイマーなどのスタッフが中心となる調理場でも、自動調理機能を活用することで質の高い商品を簡単に、安定的に作ることができる。ホテルの朝食など冷凍生地を使って大量に、均一のパン作りを求められる場面にも支持されている。
 オーブンの各段を1秒単位で監視しているので、投入回数や投入量、投入時にドアが開いていた時間まで考慮し、途中の出し入れに伴う庫内温度の低下にも対応。自動で必要な調理時間を加算し、常に望みの焼き色が可能となる。

 「調理、焼成で最も留意すべき点の1つは湿度調整」(同社)と強調する。0〜100%の範囲を1%刻みで庫内の湿度を調整でき、設定した湿度は調理開始から終了まで「庫内の湿度」として自動調整可能。食材に応じた理想的な庫内環境を設定通り、正確に作り出す。焼き物はクリスピーに、フライ物はジューシーに仕上げる。「設定した温度や湿度が、実際の庫内環境とかけ離れていることが従来機種では多く見られたが、その点を克服できた」と機種の完成度の高さをアピールする。
 蒸気も食材がべとつかないように細かい霧状のものを生成。「これにより温度ムラがなくなる。蒸気に配慮することで仕上がりに与える影響は大きい」という。

 洗浄システムは汚れ度合いに応じて洗浄ステップを選択すると、ディスプレイに必要な固形洗剤と固形ケア剤の個数が表示される。ディスプレイが示す所定の箇所に固形剤を置き、ドアを閉めるだけで洗浄から乾燥まで自動で行なう。これまで、液体洗浄を使用すると、スタッフが防具を身につけても液体が噴きかかる恐れがあった。

 保育園からの引き合いも増えている。導入した神奈川県茅ケ崎市の保育園では、厨房と遊戯室の間がガラス張りになっており、子供たちは調理の様子が一部始終観察できるようになっている。厨房をオープンにすることで安心感を保護者に提供している。それは子どもたちにも「見える」食育の場となっている。衛生面や厨房内の動線を考えてドライ厨房が必須で、1台で多種多様の調理ができる厨房機器を探していたところ、「セルフクッキング・センター」に出会ったという。

 年間販売台数約1200基。調理実演会は全国で年間600回を数える。「著名なシェフや今後事業を立ち上げる人、経験の浅いパートタイマーのスタッフなど年々幅広く機械を認知していただいている」という。
 同社では、1台で多種多様の調理ができる利点を生かして、サンドイッチのパンや具材となるローストビーフ、温野菜などをトータル的に提案しており、市場を盛り上げている。