食品工場は熱を扱うエリアの温度と労働環境が問題となっている。鍋・釜・フライヤーで囲まれたスペースは測定温度で40℃〜50℃。体感温度はそれ以上になる。季節変化も追い打ちをかけ、夏は熱いだけで済むが、冬は足もとが寒く、輻射熱で体の前面は熱いという過酷な環境になり、ラインスタッフの体調を崩す要因を助長している。
作業環境を改善するためにはこの「温度調整」が欠かせず、各社とも空調システムをうまく講じ、改善に取り組んでいる。
アースクリーン東北の空調機「メガクール」は液体が気体になるとき、周りから熱をうばう現象(気化熱現象)を利用して水だけで空気を冷やすシステム。内部構造は、冷やす空気を通す層と水が通る層とが段々になっている。水の通る層で空気の熱を奪い、冷たい空気をつくる。奪った熱を持った空気は別の場所から捨てる。
夏に外気温が35℃の場合でも、水だけで24〜26℃まで冷やせるので、エアコンを動かす時間が短くなり、電力の削減にもなる。
ニチレイフーズの船橋工場が夏場の作業環境改善のため、昨年導入した。フロンや代替フロン、冷媒ガス、さらに電気・ガスなどのエネルギーを一切使用しない同空調システムに期待を込め、設備投資した。
中央設備エンジニアリングは加熱エリアの温度改善に「置換換気方式」の空調システムを提案している。新鮮な空気を低風量でゆっくりと室内に流す仕組みで、低温の風が構造体に沿って動くという性質を活かしている。床上や壁に沿って低温の風が漂い、室内の加熱源で暖められた空気は上方へ移動、スタッフのいるスペースは低温を保つ。
製餡工場など蒸気の排熱の効率が悪かった現場で実績を上げている。製餡工場はかなり大きな鍋で大量の大豆を煮る。大豆を釜に入れる際に使うホイストとレールが上部に施してあるため、フードを備え付けることができなかったが、置換換気がスタッフの居住域を低温に保たせている。
日本の工場スタッフが過酷な労働環境に強いられる要因に、欧州と違って作業スペースを規定する基準が進んでいないことが指摘されている。ドイツの工場スタッフはDIN規格で給食施設は室温D/B28℃、相対湿度RH70%以下にするという権利を認められている。日本にも労働環境の基準化への早急な対応が求められている。