外食産業は必ず復活する、その日に備えて経営体力を強化
デリカフーズホールディングス 代表取締役社長 大��善保氏
外食向け青果物流通最大手のデリカフーズホールディングス（東京都足立区）は第４次中期経営計画「Transformation 2024」（2022〜24年３月期）を策定した。事業ポートフォリオの変革を掲げ、コロナ禍でも強い業態への販売アプローチや、外食産業以外への販路拡大、Ｅコマースなどの新規事業の強化を打ち出した。冷凍野菜の取扱いを本格化して、外食産業の利便性や食品ロス削減にも貢献する。
大��社長は決算会見で「外食産業は必ず復活する」と語り、それまでに経営体力をつけて、復活に備えると強調した。
業績不振から中計策定を１年延期
オンラインで会見した
大崎社長
「2020年３月期をゴールとした第３次中期経営計画は連結売上高400億円、経常利益11億円の目標に対して、売上高は404億円と目標を達成したものの、経常利益は６億4000万円と未達に終わった。2020年１〜３月にコロナの影響を受けた結果だ。
第３次中計では成長基盤を強化するため、新拠点・新センターの設立を順調に進めてきた。高槻センター（大阪府高槻市）や中京ＦＳセンター（愛知県弥富市）、埼玉ＦＳセンター（埼玉県八潮市）などを開設したほか、 デリカフーズ北海道�蝓碧務て算ニ攣圈砲鮴瀘�。
また、物流事業の拡大に伴い、愛知、神奈川、名古屋に物流子会社の営業拠点を新設した」
「2021年３月期はコロナの影響を受けて売上高は前期比21.5％減の317億円、経常損失は10億円、純損失は９億5000万円を見込むため、事業の安定化を優先課題とし、次期中計の発表を１年間延期した。
新中計では激変する環境に対応するため、（産地直送野菜の調達力と供給力という）当社の強みを活かしながら、これまでの延長線上にない、新たなビジネスモデルを構築して『Transformation』を果たしていく」
テイクアウト、焼肉業態にアプローチ
「基本方針は�〇�業ポートフォリオの変革、�∪腸綿�流通インフラの構築、��サステナビリティ経営の推進の３つ。
ウィズコロナを見据えた事業ポートフォリオの変革では、『コロナ禍に強い業態への販売拡大』と『販売チャネルの拡大および商品ラインナップの拡充』、『新規事業への参入』に取り組む。
当社の強みを最大限生かせる外食業態の中で特にコロナ禍に強い、テイクアウトやドライブスルー、宅配・デリバリーに積極的に販売していく。また、回転寿司や焼肉などの専門店業態へのアプローチも強化する」
「販売チャネルの拡大では外食以外の分野であるスーパー・量販店、コンビニ、給食関連企業、宅配事業などの業態へ積極的な営業を展開する。
これらを実現するために、商品ラインナップの拡充を図る計画だ。これまではホール野菜、カット野菜、真空加熱野菜を取り扱ってきたが、新たに『冷凍野菜』、『調味液』、『ミールキット商品』を取り扱い、様々な食の提供企業にあらゆる形で商品を提供する」
ミールキット、冷凍野菜を拡充
「ミールキット事業は（外食チェーン大手のワタミから）事業を譲り受けたデリカフーズ長崎（長崎県諫早市）で今年３月から製造を開始したが、すでに日量は１万パックを超える。デリカフーズ長崎の2022年３月期の売上高は15億円を見込んでいる。当社グループの経営資源・ノウハウを生かし、より利便性の高い商品として付加価値・顧客満足度を向上させていく。
冷凍野菜は以前から取り組みたいと考えていたが、コロナ禍の影響で先送りをしてきた。サステナビリティやＳＤＧｓでは食品ロス削減が大きなテーマになっている。冷凍野菜は消費期限の延長につながるため、青果物流通の未来を見据えてしっかり取り組んでいく必要がある」
「新規事業への参入では、ＥＣビジネスの『ベジマルシェ』で野菜の良さを伝える啓もう活動に力を入れる。合弁事業の『青果日和研究所』はＢtoＣ、ＤtoＣビジネスの通販ブランド『青果日和』を展開しているが、企業コラボやリアル店舗展開などを引き続き進めていく。
こうした計画をしっかり実行して、事業ポートフォリオの変革とビジネスモデルの安定化を推し進める。2020年３月期の売上げ構成比は外食産業が83％を超えていたが、2024年３月期には外食で63％、コロナ禍に強い外食を８％、給食７％、ミールキット５％、ＢｔｏＣ７％に高める」
2024年までに新拠点３カ所を増設
「青果物流通インフラの構築では�．札鵐拭次�工場設備の拡充と新エリアへの進出、��幹線物流網の強化および物流事業への参入、��イノベーション・ＤＸによる徹底した効率化を推進する。
2024年までに新工場、または物流センターを全国に３カ所増設する。候補地としては関東、関西、中国エリアを予定している」
「ＤＸの推進では新たな生産システムや受注システム、発注・在庫システムの内製化を進めてきたが、開発にめどがついた。今後は現場に落とし込んで効率化を図っていく。
サステナビリティ経営の推進ではサスティナブル宣言の実行をはじめ、ＳＤＧｓへの貢献、リスクマネジメント体制の強化を進め、持続可能な社会を実現する事業モデルを確立する。
こうした基本方針を確実に実行し、第４次中経の最終年（2024年３月期）は売上高450億円、経常利益10億円、純利益６億5000万円の達成をめざす」
外食産業の復活に備える
「外食産業の経営環境は非常に苦しいが、必ず復活すると確信している。日本人はコロナ禍で外食のおいしさや楽しさ、ありがたさを改めて思い知った。
ワクチンが国民に広く行き渡り、コロナが収束すれば、外食産業に対する評価、成長の可能性はコロナ前より高まるはず。我々も体力をつけて、強固な体制を構築しておく必要がある。外食産業の復活に備えたい」