「国際ロボット展」に13万人超が来場
食品現場での導入モデル提案も
世界最大級のロボット専門展示会「2017国際ロボット展」が東京ビッグサイトで2日まで行われた。２年に１度開催の同展示会は今回で22回目を迎え、過去最大の612社・団体から2775小間の規模で出展。来場者数は前回を上回る13万人を超えた。
産業用ロボットゾーンでは協働ロボットの展示が来場者の目を引いた。生産性向上をはじめ労働力確保、コスト削減、多品種少量生産への対応といった現場の課題に対し、協働ロボットにＡＩやＩｏＴ技術を取り込んで工場の最適化を図るロボットソリューションを提案した。
作業者の安全を確保する協働ロボット
ファナックは３Ｄ（３次元）ビジョンセンサー搭載の協働ロボットCR-15iAを出品。３Ｄビジョンセンサーを従来製品よりコンパクト化しながら、高速処理を実現する。ロボットは作業者と接触しても停止するため、安全柵を必要としない。展示場では３Ｄビジョンセンサーで両側にある部品棚から製品組み立てに必要な部品を検出して取り出し、キッティング用コンテナに整列。作業者がベルトコンベアで流れてきたコンテナ内の部品を使って組み立て作業を行うまでを実演して見せた。
不二越も安全柵不要の協働ロボットCZ10を出品し、果物の箱詰め作業をデモンストレーションした。各軸に設置したトルクセンサーと３Ｄ画像センサーによって作業者との接触を検知すると即座に作業を停止し、作業者がさらに近づくとアームを回転させて自ら回避する機能を持たせた。また、ロボットが上下左右にアームを回転するなどしてどのような姿勢を取っても25mm以上の隙間ができるようにし、作業者の挟み込みを防ぐよう設計した。
安全柵が不要の協働ロボット（ファナック）
供給ボックスから出荷ケースへ搬送（不二越）
双腕ロボット同士による協働実演も
協働ロボット２体による野菜の袋詰め
（川崎重工業、ＡＢＢ）
川崎重工業とＡＢＢは協働ロボット分野での協業に先月合意したばかりだが、早速、両社の展示場では川崎重工業の双腕スカラロボット「duAro（デュアロ）」と、ＡＢＢの双腕ロボット「YuMi」が、作業者と一緒に野菜を袋詰めしたり、ロボット２体が協働して電子部品組み立てたりした。
YuMiは柔軟性の高いハンド、部品供給システム、カメラによる部品の位置決めが可能な次世代型ロボットとして世界で注目を集める。duAroは２アームを１台のコントローラーで制御し、また、片腕を人間の作業範囲と同じ最長76�僂棒澤廚靴討い襪燭瓠∈邏伴圍運擁�の設置スペースで済む。
アームは台車に設置されているためラインを変更せず投入できることや、衝突検知機能を搭載していることから、2015年の発売以来、食品業界で関心を集めている。
duAroを使った協働例として、展示場では同社のパートナー企業が弁当のフタ閉め作業やおにぎりの番重詰め作業を実演、現場での導入例を提案した。
双腕ロボットYuMi（ＡＢＢ）
新製品の「duAro2」（川崎重工業）
ＶＲ技術とＡＩロボットを連携
ＶＲ技術と双腕型ＡＩロボットを連携
（デンソーウェーブ）
デンソーウェーブはディープラーニング（深層学習）とＶＲ技術を用いた双腕型マルチモーダルＡＩロボットを展示した。ＶＲ技術とロボット操作の連携で直感的なティーチングができるのが特長。記憶した軌道とアームやハンドから得られるセンサー情報をロボットに学習させることで複雑なプログラムを組むことなく、作業を覚えさせることができる。デモンストレーションでは来場者の１人がＶＲデバイスを使って野菜を盛り付けると、しばらくして多指ハンドを装着した双腕型ロボットが同様の作業を行った。
同社はこのほか、ロボットの衛生面に配慮したジャケットを開発した。「食品業界のニーズをくみ取った」（担当者）もので、次亜塩素酸にも対応しているという。展示場では異物混入を防ぐ青色の食品用ハンド（ニッタ社製）を装着したロボットが弁当具材のピッキング作業を実演した。
食品工場ではすでに高速作業を行うパラレルリンクロボットや双腕ロボットが活躍している導入例はある。政府も「生産性革命」を掲げ、今後は税制や規制緩和などでロボット開発を後押しすることから、食品業界での用途開発が進めば導入ケースはさらに増えそうだ。
ロボット専用ジャケット
（デンソーウェーブ）