野口正見の「5S活動による食品工場改善」 −36−
「あいさつ」からすべてが始まる(2)

     野口正見氏

 「ありがとう」のあいさつは一切のことを好転させる人類最強の言霊(ことだま)だそうだ。「有り難い」とは存在することさえ難しい、めったにない貴重なことを意味する。
 この言葉は感謝を表し、上司から、あるいは同僚から「何々してくれてありがとう」と感謝されるほどうれしいことはなく、親近感・一体感が生まれる。感謝を伝える言霊のエネルギーを相手に伝える力があり、よりよい人間関係を築き上げてくれる。
 
 マーケティングコンサルタントの西川りゅうじん氏の産経新聞『平成志事術』からの文章を一部引用させてもらう。
 「枯れ木のように枯れ果ててしまった人の心を癒す新しい特効薬が発見された。その名を『アリガト酸』という(冗談です)。ありがとうと一言声をかけるほど、枯れた心に花を咲かせる行ないはない。言う方は何気なくとも、言われる方はうれしいもの。
 マザー・テレサが『愛の反対は無関心』といったように相手に関心を持ち、相手に感謝することが、人を元気づけるのだ。また同時に、『ありがとう』と常に周囲に感謝の意を表す事は、公私を問わず、人生に花を咲かす最善の方法である。」

 筆者にとって心にしみる文章であった。
 ソシキ(組織)の木に「アリガト酸」を振りかけて、すべての枝に花を咲かせよう。
 工場を視察、検査に訪れる得意先が現場に入り、従業員から感謝の笑顔のあいさつを受け、感心し、安心して帰る。「おはよう」、「ありがとう」の躾が身につき、前述の感謝の言霊が来客の胸を射たものとみられる。このことは現場のセールスプロモーション活動として評価してよい。

 弱いチームが強いところと戦うためには、戦略・戦術以前に集団の結束が必要。
 これは名将と言われた野村監督の言葉である。その結束は「おはよう」、「ありがとう」のあいさつから実を結ぶ。