融点-22℃の適温蓄冷材。納品先によって形状
は異なる
シャープは液晶材料の研究で培った技術をベースに、融点がマイナス22℃の「適温蓄冷材」をこのほど開発した。従来の保冷剤に比べて短時間で凍結できるため消費電力が削減できる。原料不足で夏場は品薄傾向にあるドライアイスの代替品として、食品などの冷凍輸送用蓄冷材としても活用できる。
シャープの社内ベンチャー「TEKION LAB(テキオンラボ)」は、真夏の高温や真冬の低温でも「液晶」という固体と液体の中間の状態を維持するための液晶材料温度設計技術を応用し、マイナス24℃~プラス28℃の間の特定の温度を一定時間保つ蓄冷材の開発、実社会への応用に取り組んできた。
新たに開発した「適温蓄冷材」の主成分は水で、マイナス22℃で溶け始める。固体から液体に変化する間、周囲の空気や接触する対象物をマイナス22℃前後に維持することができる。保持できる温度や時間は、蓄冷材の使用量や使用条件によって異なる。
これまでの蓄冷剤のほとんどは、融点がマイナス25℃で、凍結温度がマイナス30℃以下。使用前にはマイナス40℃の専用凍結庫内で凍結させる必要があるため、多くの電力を消費する。新たに開発した「適温蓄冷材」は、マイナス25℃で凍り始めるため、従来の保冷剤と比較した場合、凍結させるためにかかる時間が約40%以上短縮できるほか、マイナス25℃以下に設定した業務用冷凍倉庫であれば、凍結するために空きスペース、未利用の冷熱を活用することができる。
すでに医薬品輸送用容器・資材の製造・販売を手掛ける㈱スギヤマゲンがワクチン輸送や保冷用途に採用しており、冷凍食材の配送用としても数社から引き合いがあるという。