洋風調味料専用酢を日本で初めて開発
培ったノウハウ生かし「洋風酢」ならではの技術磨き上げ
キユーピー醸造 五霞工場
キユーピーマヨネーズの原料ビネガーを製造販売するため1962年８月に発足したのがキユーピー醸造��（当時は西府産業�蝓法Ｍ�63年中河原工場を東京府中に設立。1970年に現社名となり、1974年滋賀工場を建設。基幹生産拠点となる五霞工場は1985年に建設された。
五霞工場の外観
主力商品の「洋風酢」は西洋で主に製造されている食酢であり、果実や野菜などを使ったもの。代表例はアップルビネガー、ワインビネガー、モルトビネガーなどがある。
昨年の生産量は約７万1000ｔ。その６割は原料食酢（28％）、醸造酢（30％）などの食酢。ほかにぽん酢などの調味加工酢が28％、だし入り酢などの調味液が８％、その他アルコール製剤、発酵調味料、発酵乳酸などが７％という生産割り合い。
左から白石靖・取締役研究所長、内田信二・取締役
生産本部長、藤田守・取締役営業本部長
基幹拠点の五霞工場は全生産量７万1000ｔの54％、３万7000ｔを占める。そのうち１万ｔはキユーピーのマヨネーズなどグループ向け。
敷地9000坪、従業員147名（男52％、女48％）。
同じ敷地内にキユーピーの五霞工場、キユーソー流通、ケイパックなどグループ工場が数多く配置されており、キユーピーの東日本の一大拠点となっている。キユーピーのマヨネーズの生産に欠かせない食酢はキユーピー醸造の五霞工場からパイプラインで供給している。同じ敷地内だからできる安定供給の仕組みであり、物流コストがかからない。
深部発酵、静置発酵、水平発酵の特性いかし食酢を生産
食酢を生産する際、欠かせない発酵は３つのタイプがある。それぞれの特性を生かして多種多様な食酢を生産できるのが五霞工場の強さ。
もろみの入った水平発酵漕
�／蕊�発酵は酸度の高い、クセのない発酵ができる。大型タンクを使う。「通気撹拌発酵装置」はドイツ製。タンク式では酸度15度、バッチ式ではさらに18度という高い酸度の製品までできる。日産６〜７ｔ生産する。細かな気泡と菌が液中に分散し、全体で発酵させる。
�∪澱嵌�酵は1000ℓの水槽にもろみを入れ、もろみの表面に菌膜を植えつけて発酵する。
��水平発酵は上から雨どい状の筒を降りてくる間に発酵させる方式。
静置式と水平式は酸度が３〜６％程度と低いものとなる。
創業以来変わらぬ菌の張り替え、休みなしの毎日作業
食酢は原料を糖化・アルコール発酵させ、酢酸で�＼澱岫⊃緤伸�深部のいずれかの発酵を経て、貯蔵・熟成し、製品を調合して充てん、出荷となる。
深部発酵装置
中でも「静置式」は職人技と、歴史・技術の積み重ねを感じさせる仕組み。もろみ液の表面に薄い網を使って、手作業で酢酸菌を植え付けると、表面に菌の膜が広がる。10日ほどで発酵し、その後、半年ほど熟成させる。膜の張り替えは土日も含めて毎日行う。「この作業は創業以来毎日行っている。担当者は土日もなしに菌を守っている」（同社）という。
静置式の作業は非常に微妙。特にもろみと菌は揺れに弱いため「東日本大震災の発生時には揺れで、全て使えなくなった」（同社）。そこで滋賀工場から菌を持ち込んで作業を継続することができた」という。
この時の経験から、もろみを入れる水槽は天井から吊り下げることにした。
キユーピー醸造は五霞工場のほか、滋賀工場と日光工場がある。2009年に建設した最新の日光工場は機械化を進め、従業員わずか５名で運営している。
前期の同社売上げは115億7000万円。
人と技術を磨き、新価値創造、『芳醇ビネガー』を開発
芳醇アップルビネガー
キユーピー醸造が取り組む食酢の市場は残念ながら頭打ち状態となっている。そこで同社では「人と技術を磨き上げ、強い企業体質」づくりをめざしている。
中でも期待しているのが「芳醇ビネガー」。酢の価値を高める３つの特徴として�）Ы罎聞瓩雖△泙蹐笋�な酸味�Ｋ�かな甘みとコク――がある。これを実現するため、次の４つのポイントに取り組んでいる。
１）果汁の使用量＝果汁がＪＡＳ規格の約６倍とたっぷり使用
２）アルコール発酵＝果汁の糖分を残した濃いもろみを使用
３）独自の酢酸発酵＝高エキス化でも風味を損なわない酢酸発酵
４）熟成＝熟成により芳醇な香りを実現
開発した「芳醇アップルビネガー」は香り、酸味、コクの３拍子揃っている。また、濃厚ながらもすっきりした発酵感がある。これは同業他社製品との比較分析結果にも明確に表れている。
またビネガーを活用した商品として大麦黒酢、りんご酢、トマト酢、紫いも酢、ぶどう酢、などがある。さらに、ビネガーを使ったドリンクとして、様々な商品を揃えている。