成長するカット野菜、加工場を拡充

 和郷園(千葉県香取市)は“農業生産者の自律”を合言葉に活動している。生産者の技術向上はもちろん、GAPの取り組み、加工、販売、リサイクルなど農業を軸に活動の幅を広げている。カット野菜や冷凍野菜の売上げは創業以来2ケタ増が続いている。

冬、繁忙期を迎えるカット野菜

 和郷園は木内博一代表理事ら若手の有志5名が1991年に野菜の「産地直送」を始めたのが母体。農協や市場を通す流通方法では、生産者が作った野菜がどこで、どのように消費されているのかが見えない。また農家の価格交渉力が弱く、生産に要したコストが確実に賄われるとは限らない。これらの点に疑問を感じた木内氏らはマーケットと農業生産現場をつなぐことをめざし、農業に製造業の視点を取り入れて顧客のオーダーに合った野菜(種類、形態など)を契約販売する方式で生産する事業を始めた。
 1996年に野菜の加工や販売などを行なう(有)和郷を設立(2005年に(株)和郷へ組織変更)、1998年に生産者組合として農事組合法人和郷園を設立した。
 「六次産業化という言葉が使われる前から生産から加工、販売を手がけている。“生産者の自律”が私たちのめざすところ。何事も生産者自らが主体的に考えて実行し、自分たちの手で作ったものを自分たちで責任を持って消費者のもとに届ける、これが原点となっている」(同社)という。
 それだけではない。トレーサビリティという言葉が使われる前から履歴管理を徹底してきた。
 日本の野菜農家で最初にEurepGAP認証を習得したのも、木内代表理事が運営する“さかき小見川農場”、和郷園の会員でもある。その後、和郷園は日本の事情にあった日本版適正農業規範(J−GAP)の作成に着手した。

葉物のほか、根菜類も扱う

 和郷は和郷園の組合員である生産農家92軒が出荷する野菜や花きなどを、生協やスーパーマーケットなどへ出荷するほか、インターネットを使った直販も行なっている。
 農作物の一部を冷凍加工センター(2003年稼働)やカットセンター(2004年稼働)に運び、加工品として出荷。カット野菜はスーパー(惣菜用)や外食向けがメインだが、少量ずつ複数種類の野菜を混合した「とん汁セット」など家庭用の商品も開発した。サイズや形の問題で規格外として廃棄されることの多い野菜も、カット野菜として付加価値をつけることで有効活用している。
 冷凍野菜はほうれん草をはじめ、小松菜、枝豆などを旬の時期に冷凍加工して周年供給している。

 成長部門であるカット野菜は300近いアイテム数となった。売上高はカット野菜だけでも月1億円を超え、毎年10%増で推移している。特にここ4、5年の伸長は著しい。
 本社事務所に隣接するカット野菜の加工場はキャパが限界に達しているという。そこで、12月から集出荷センターを別のセンターと統合し、この場をカット野菜工場に拡充した。「本格化する冬の繁忙期に間に合った」(同社)。設備を整備し、顧客の多様な要望に応じた商品開発を行ない、商品のラインナップを拡充させる。

「とん汁セット」や「天ぷらセット」などアイテム数は年々増加している

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2013年1月9日号掲載