阿部万寿雄の「食の安全」と「ものつくり」 −3−
原発の放射能と食の安全

 東日本大震災は巨大地震と大津波に加えて東京電力の原発事故
は戦後最大の災害となった。多くの犠牲者にお悔やみを申し上げるとともに、災害者の方々にお見舞い申し上げます。
 原発の放射能漏れ事故は周辺の農産物・水産物などに甚大な影響を及ぼし、その上に風評被害が加わり深刻な事態となっている。
 目に見えない放射線の健康被害が心配される。しかし普段から自然界の放射線(1人年間1.5ミリシーベルト)、また医療装置の放射線(胸部X線・CT断層撮影1回分6.9ミリシーベルト)を受けている。正確な知識と冷静な対応が求められる。

 食品への不安解消のため、今年4月1日から放射能食品暫定規制値(放射性セシュームの上限を)年間5ミリシーベルトから年間1ミリシーベルトに引き下げた。今までの農産・畜産・水産物の暫定規制値1kg当たり500ベクレルより5分の1である100ベクレルに引き下げられた。
 飲料水・牛乳乳製品は、子供乳幼児が放射の影響を受けやすいため、1kg当たり40ベクレルに規制され厳格化してより一層食品の安全を確保する事になった。

ベクレルとシーベルト

 ベクレル:放射線を出す能力を示す放射線の強さや量を表す単位
 シーベルト:人間が放射線を浴びた時の影響を表す単位。
 放射性物質を電球に例えると、光の強さがベクレル。電球からの距離で異なる明るさをシーベルト。

 基準値が厳しくなっただけ生産や流通の負担が増大する。米の作付規制や沿岸漁業の操業自粛をしばらく続けざるをえなくなる。長期化も覚悟しなくてはならない。
 大手小売業や外食産業は独自の検査体制を整えつつあり、学校給食も独自の受け入れ基準値を定め実施を始めている。
 土壌や海洋の放射能の汚染の回復は短期間には困難であり、食の安全対策には長期にわたって農業・水産業へ息の長い支援協力が必要である。