大冷の“骨なし魚”を生産、魚肉を有効活用
煙台正祥食品 (中国シリーズ<3>)

 煙台正祥食品(山東省莱陽市)は、中国の食品大手、龍大食品集団と日本のセイショウフーズの合弁会社で、大冷の人気商品“骨なし魚”の主要生産拠点。年間生産量は約5000t。骨の残骨率の圧倒的な低さが大冷“骨なし魚”の最大の特徴だが、規格外や端材の魚肉は加肉用に回す。中国に駐在している山本佳嗣セイショウフーズ取締役生産本部長は「原料で捨てるのは骨だけ。その骨もえさとして販売している」とリサイクル率の高さを強調する。

    山本生産本部長

 煙台正祥食品は16魚種200規格以上あるラインナップのうち、原料価格が下がっている赤魚とかれいの生産量を伸ばしている。アラスカ産黄金かれいの加工現場を取材した。
 漁獲後、船上で頭と内臓、尾を取り除いた状態で凍結した鮮度の高い原料を18kg単位のブロックで仕入れ、3時間かけて解凍する。まず、うろこを落とす。機械で落とせるのは7割程度のため、残りは手作業。「骨と同じく、うろこも絶滅させる」(山本生産本部長=以下同)。
 うろこを落とした後は3枚におろし、別の作業員が骨を取る。後に結合させるため、切り身は1尾分をセットにしておくのがポイント。「後から同じサイズの切り身を探すのは余計な手間がかかる」ため。
 もともと内臓があったスペースに加肉し、1対の切り身を重ねて結着する。
 結着した切り身は凍結後、規格に合わせてカットする。凍結した魚をカットするため「包丁は少し摩耗しているくらいが丁度いい」。ここで端材が生じるが、凍結した状態で皮をはぎ、解凍して加肉用に回す。そのため魚肉はほぼ全量、製品に使っている。
 人の手で触れた切り身は、品温の基準を満たすために再度、凍結する。その後、エックス線検査装置に映る画像を専任の担当者がチェックして包装する。この業務に就くためには、社内試験に合格しなければならない。
 原料室と包装室を除く加工エリアは壁を取り払っているため見通しがいい。原料・包装室を合わせると直線で150mもある。「HACCPの考え方では工程ごとに仕切る方が望ましいのかもしれないが、作業員が常に誰かに見られている状態にし、死角を作らないことも大事」という。
 赤魚、かれいの値が下がったとはいえ、他の魚種の生産をやめるわけにはいかない。「主力のさんま、秋鮭、さばなどは生産数量が多少減ることはあっても、ゼロになることはない。欠品せずに、品揃えが変わらないことに顧客の支持を得ている部分もある」という。
 福島第一原発事故の影響で日本から中国への魚の輸入が制限されているため「原料を調達するのは大変だが、不可能ではない。そこを克服すれば単価で魅力が打ち出せる」。