カット野菜を製造する(有)埼玉フーズ(埼玉県川越市)は川越市東部にある既存の冷蔵冷凍倉庫を14年10月取得、営業を開始している。また、施設の一部を改修し、加工場への組み換えも進めており、今年春の操業をめざしている。本社工場と合わせ、生産能力は最大で従来の倍増となり、カット野菜の需要増に応じる。
コールドセンターA棟の外観
この一部がカット野菜工場になる
川越市鹿飼中島町。土地面積2300坪、建屋が3棟ある冷蔵倉庫を取得した。もともとこの物件を所有していた企業が、この地で製氷業を主体とした倉庫業を長く営んでおり、地域の食を支えるのに欠かせない存在だった。
しかし、昨年事業の継続を断念。ちょうどそのとき、本社工場のキャパが限界に達し、近隣で新たな拠点を設けることを検討していた埼玉フーズがこの物件に着目。すぐに取得に向けて準備を進めていった。
取得後、まず取り組まなければならなかったのは倉庫業の継承、地域の食を守ることに他ならなかった。倉庫を利用しているユーザーは50社以上。精肉や鮮魚、野菜など原料だけでなく、加工食品や菓子など扱うものは幅広い。埼玉県西部にある大型の冷蔵倉庫の数は限られているため、ユーザーからのニーズは計り知れない。
今は製氷業を行っていないが、氷の販売は継続している。業者から氷を仕入れ、同社が細かく裁断。近隣の飲食店や食品加工業者に向けて配送している。事業を引き継いで昨年、最初の夏を迎えたが、地域との繋がりを感じたという。
施設はA棟(7バース)、B棟(1バース)、C棟(3バース)の3棟で構成。ただ、接車ゾーンは長く手付かずにいたため、充分なスペースが足りず、バースの数に見合った機能を果たせずにいた。大型車の接車が難しく、複数の車が同時に往来するのも苦労があった。同社が引き継いだのを機に、接車ゾーンを改修する。これが終われば、作業もより効率的になり、荷受けの量もさらに伸ばしていきたいとしている。
柿沼専務
もともと、同社がこの冷蔵倉庫の取得を決めたきっかけは、主力のカット野菜の需要が増大しているためだった。カット野菜の主要ユーザーはファストフードやファミレスなど。同社が手がけるカット野菜は玉ねぎ、大根、にんじん、かぼちゃ、小松菜など様々で、アイテム数の多さで外食産業から支持を得ている。
本社に併設している第1工場の出荷量は1日およそ12〜13t。ここ数年需要が増えていたが、震災以降特に拍車がかかり、キャパは限界に達していた。「新規だけでなく、既存ユーザーからの生産要請にも応じられないことが続いていました。本社工場には拡張スペースはなく、別に工場を設けるしか方法はないと判断しました」(柿沼丈晴専務)という。
950坪あるA棟の一部をカット野菜工場に組み替える。製氷室や砕氷室など1階部分を占める庫内は強固な作りをしており、加工場として充分な機能を果たせると見ている。これらの部屋を繋げて、衛生度を高めた加工場に改修。改修後のA棟はカット野菜工場と冷凍庫、冷蔵庫の機能を合わせ持つ建屋となる。本社工場と合わせ、生産能力は最大で従来の倍増となると見込んでいる。
立地が川島インターチェンジから近く、物流面でも機能性が格段に向上するのを期待している。「当社にとって念願のカット野菜の第2工場。接車ゾーンの改修が完了すれば、物流機能も今までの比にならないでしょう。いい案件を引き継ぐことができました」と柿沼専務は語る。「地域の食を預かる冷蔵倉庫であるとともに、カット野菜の生産拠点に。ユーザーの要請に真摯に応じられるよう気を引き締めていきたい」と意気込んでいる。
カット野菜工場の操業は今春を予定。本稼働が始まれば、スタッフの増員も必要となる。本社工場からの応援とともに、新規でも採用。人材確保の困難を予測し、機械化・省力化を考慮した加工場とする。
需要増に対応するために設けた第2工場(コールドセンター)だが、「急激な事業拡大は考えていません。着実に、一歩一歩前進を」と柿沼専務。「しっかりとした体制づくりは今後のカギ」と気を引き締める。
それに呼応するように、FSSC22000取得に向けたプロジェクトを立ち上げたばかり。同社が国際規格の認証に着手するのは初めて。「初めなので戸惑うことも。しかし、スタッフの能力、前向きな姿勢を信じています」と柿沼専務は笑みを浮かべる。本社工場と新たに加わったコールドセンター、この2拠点が認証取得に向け、間もなく同時にキックオフする。