日本フードシステム学会秋季大会が「食の信頼の復興―フード・コミニケーション・プロジェクト(FCP)の意義と展望―」をテーマに千葉大学園芸学部で23日開催された。
農水省の神井弘之氏が「FCPの枠組みと狙い」について講演。「近年の食品事故・事件の多発で、食をめぐる信頼は著しく傷ついた。食品メーカーには顧客や消費者からさまざまな質問が寄せられ、メーカーは対応に苦慮した。そこで農水省では08年からFCPを進めている。官民合同で『協働の着眼点』をキーワードに、FCPダイアログ・システム、工場監査シート、商談会シート、マネジメント規格、地域振興プログラムを開発し、各企業で実践を行ない成果が見られている」とした。
西藤理事長
基調講演として食品産業センターの西藤久三理事長が「FCPへの食品産業の期待」と題して講演した。
西藤理事長は「消費者庁が設置され、食品に関する検討が行なわれている。ここでは①加工食品の原料表示原産地表示の拡大、②トランス脂肪酸の含量表示、③遺伝子組換え食品の表示、④食品の期限表示、⑤食品表示に関する一元的な法体系の在り方、⑥健康食品の表示等多岐にわたるもの――が挙げられる。
このうち、加工食品の原料表示原産地表示の拡大については、意見交換会やパブリックコメントなどで義務化すべきとする意見が多かった品目(昆布巻、黒砂糖、果実飲料、かつお削りぶし・かつおぶし、食用植物油、うなぎ加工品)のうち、当面、昆布巻と黒砂糖の原料原産地表示を対象品目とする方向で検討するとしている。
しかし、この方針は部会長一任としており、消費者目線と生産者目線の消費者庁の趣旨と異なり、違和感がある。また、JAS法に基づく食品表示違反への対応として、取締強化の方針を示しているが、取締強化により信頼回復は出来るのか、疑問がある」とした。
座長報告として東京大学の中嶋康博準教授が「食の信頼回復の経済学」と題し講演した。
中嶋氏は「食の信頼を確立するには、個々の事業者が不祥事を起こさないことの積み重ねが最善の方策であり、信頼が利益に結びつくように、商品への信頼として品質管理・品質保証、ブランド化、JAS格付する。企業に対する信頼はISO取得や今回のテーマであるFCP活動が有効的である」とした。
その後、企業及び自治体の活動について、テーブルマーク、三菱商事、ローソン、岩手県農林水産部の担当者らが報告した。