タマゴの「未来型」工場めざす様々な取り組み
原料卵のコンテナ廃止、常識の「カラ」破り合理化
キユーピータマゴ�蝓／兄姐ス�場（埼玉県入間郡三芳町）　＜上＞

　キユーピーグループのキユーピータマゴ（東京都調布市仙川、逸見良則社長）は三芳工場をスクラップ＆ビルドで建て直し、新三芳工場として３月中旬から再稼働を始めた。

　「強さ」と「優しさ」を兼ね揃えた“未来型工場”がコンセプト。従来の卵工場の常識を打ち破る斬新なアイデア、新技術、新システムと工場運営の新しい発想を組み込んだ。逸見社長は卵メーカーとして「カラ破りな工場をめざした」としており、「世界基準のレベルをめざす」と意気込みを表現する。

　工場設計のコンセプトとする「強さ」は�”兵舛砲海世錣蝓�顧客に安全・安心をお届けする、��徹底した合理化、効率化により、競争力ある商品を提供――これにより未来への投資ができる基盤を作る考え。
　「優しさ」は�―抄醗�への優しさと、��環境への優しさ。鶏卵加工工場の勤務は重労働で「３Ｋ」業種と捉えられているが、業務を徹底して合理化することにより、従業員の負担軽減を図った。厚生施設も充実させた。環境対応についてはＣＯ２削減を重視した。

コンテナ廃止、ラックを工場で保管せず、貯卵は全自動で棚管理

　三芳工場で取り扱っている製品は�．團蹇悉爾討鵑稽篥猜欖鼻⇔篥狃于戮垢襦崚犒覬嬪顱廚鉢�角型容器に充てんしチルド流通する「日配液卵」の２タイプ。キユーピータマゴの全国19の直営工場は大半が日配型であり、冷凍液卵を手がけているのは笠岡工場（岡山）と三芳工場に限られる。しかも三芳工場の凍結液卵は東日本一帯をカバーしているため、生産量はピロー包装の凍結卵がチルド卵を上回る。

自動ラックシステム（貯卵庫）

　養鶏業者からの原料卵の入荷はこれまでコンテナ単位で行なっていたが、新工場切り換えを機に、搬入の機敏性が高いラック台車に替えた。これにより工場内で一時預かりしていたコンテナの保管スペースが不要となった。
　入荷した卵は納入日、産地、採卵日などのほか、重さ、色などの原料卵データをＩＴ管理。入荷したラック台車から卵を小さなアルミ盆に移し替え、貯卵庫で保管する。自動ラックで作業を行なう間も原料卵が割れないように、アルミ盆を採用した。「アルミ盆に載せると卵が安定し、それにより自動処理が可能になった」（逸見社長）。貯卵庫内ではラックマスター（自動クレーン）が一番近い棚を割り出し、自動で棚に移し替える。
　貯卵庫の保管時には最短の棚に置くが、取り出すときは先入れ先出し、これをコンピュータが管理している。原料の搬入に使ったラック台車は洗浄して養鶏業者に返却する。工場に保管せずそのまま持ち出すことから、この仕組みは「ラックアウト」と称している。この「ラックアウト」システムと貯卵個の自動ラックシステムの導入により、従来に比べて工程スペースを約50％削減できた。

独自開発した割卵システム

　貯卵庫から取り出した原料卵は洗浄し、割卵する。
　洗浄、消毒までのコンテナ移送はフォークリフトを使っていたが、工場の新装を機に自動移送に切り換えた。これで従業員の負担が軽減し、作業中の安全性も高まった。「原料卵の移動が重労働で、従業員の負担が大きかった」（逸見社長）。
　割卵作業はキユーピーが独自開発した「ＱＰ−Ｎ600」で１分間に600個処理する。
　１個１個の型に乗った原料卵の底が２つに割れ、ナイフが一瞬の間に殻の下を叩いて割る。割卵後は全卵、あるいは黄身と白身にセパレートなど用途に応じて処理する。１分間に600個の処理数は、10秒で60個、１秒の間に６個というハイスピード。見学者には卵が１つの列になって流れていくのを見送るしかできないが、配置されている従業員は不良品を正確にはじき出す。
　プロの目はどこが違うのか。「彼女たちは１日20万個の卵を毎日チェックしているんです。つまり日本で一番卵を見ている人たちであり、入荷する産地情報を見ただけで卵のクセまで熟知している」と逸見社長が説明する。

ピロー製品（１kg）をスパイラルフリーザーで凍結

　ピロー包装の凍結卵は袋に充てんし、ジャイロフリーザーで凍結してから箱詰め。さらにパレタイザー（集積機）で商品をパレット積みし、冷凍保管する。「箱詰めしてから凍結するとスペースが必要となる。凍結→箱詰めとしたことで凍結時間が大幅に短縮され、在庫スペースも削減できた」（逸見社長）。
　日配製品は箱型容器に半自動で液卵を充てんし、フタをして冷蔵保管。関東周辺の製菓製パン、食品メーカーなどの需要家にチルド配送している。ここでは充てんの自動化を課題としている。