肥満者の「隠れ貧血」にバナナが効く?

 日本バナナ輸入組合(東京都千代田区、ケナード・ウォング理事長)は、バナナの長期間摂取が日本人肥満者に対して貧血抑制効果の可能性があることを確認したと発表した。消化促進作用や抗酸化作用、免疫力を高める作用などの研究はすでに発表されているが、肥満者を対象に貧血との関係性を明らかにしたのは今回が初となる。

 同組合の調査によれば、バナナは日本人がよく食べる果物の1位に17年間連続で選ばれているという。今回の研究報告でバナナの健康効果にさらに関心が集まりそうだ。

バナナ摂取が鉄低下を防ぐ

伊藤院長(同組合ホームペ
ージから)

 臨床試験は赤坂ファミリークリニック(東京都港区)の院長で、東京大学医学部附属病院の伊藤明子(いとうみつこ)小児科医らの研究グループが昨年行った。

 25〜45歳未満でBMI(ボディマス指数)が24以上の男女31名をバナナ摂取群(1日120g摂取)と非摂取群(通常の食事のまま)に分けて4週間実施した。

 その結果、「血清鉄(血液中に存在する鉄)」と「フェリチン(貯蔵鉄)」の値に有意差が見られた。血清鉄は非接触群で低下した一方、摂取群で低下は見られなかった。これは鉄の低下をバナナ摂取が抑制した可能性がある。

 フェリチンはバナナ摂取群で70ng/mLから75ng/mLへ増えたのに対し、非摂取群は79ng/mLから70ng/mLに低下した。フェリチンはたんぱく質でできた籠のような構造の中に鉄を含み、体内で鉄需要が高まると、最初に使われるという。バナナ摂取によって、鉄の低下が抑制されたことを示している。

女性だけでなく、肥満者に隠れ貧血

 日本の鉄欠乏者率は30〜48%で「貧血大国」と言われている。特に女性は1日あたり鉄分を12mg摂取する必要があるが、2001年以降8mgのまま推移し、改善していない。また、最新の研究で肥満者は「隠れ貧血」のリスクを持つことがわかってきたという。

 これまで肥満者は加工食品や炭水化物の摂取が多いため、鉄を含む食材の摂取量が少ないことが貧血リスクにつながっていると考えられてきたが、近年では肥満者の脂肪組織から分泌された炎症性物質が起因して、鉄を腸管細胞から吸収しにくくしていることが研究で明らかになった。

 この肥満者特有のメカニズムによって、ヘモグロビン値は正常なのにフェチリンの値が低い「潜在的鉄欠乏症=隠れ貧血」の状態になりやすいという。バナナ摂取はそのリスクを抑制する可能性がある

 それではなぜバナナは肥満者の鉄欠乏を改善できるのか−−。バナナの鉄含有量は可食部100gあたり0.3mgと微量であることを考えると、研究チームは「バナナ摂取による直接的な鉄の増加とは考えにくく、バナナに含まれるビタミンC、ビタミンB6、葉酸など鉄吸収を促進する微量栄養素によって鉄吸収が促進された」と考察している。