日本企業の中国進出を支援
中国産業団体総合駐日事務所 首席代表 張 康生氏
駐日事務所は日本政府の関係部門や関連団体との連絡業務を担当。現地産業の最新事情視察ツアーを企画するなど、日本企業の中国進出を支援している。助言を求める日本企業は年々増加しているため、張主席の忙しい日々が続いている。
張 首席代表
――上海市産業界の駐日事務所の首席代表として、中国と日本の橋渡しを担っている。
張 上海市の駐日事務所は立ち上げから10年以上が経ちます。上海市と横浜市が姉妹都市ということで、最初は横浜に事務所を構えました。私は上海出身であり、日本でも大学交流で滞在した経験があることから、事務所の所長を任せられました。立ち上げ当初はそれほど仕事がありませんでしたが・・・。
――今では忙しそうだ。
張 その後、日本企業が中国に進出し、投資や工場設置が盛んになり、いわゆる中国ブーム。忙しくなりました。上海と横浜を超え、中国と日本の緊密な経済交流のため、様々な産業団体の駐日事務所を設立しました。もちろん一気に出来たわけでなく、１つ、２つと増えていきました。包装技術協会の駐日事務所もその１つですが、最初に出来たのは展示会を運営する事務局です。
――その意図とは？
張 中国政府が展示会産業に力を注ぐ姿勢ですね。当時、世界の展示会産業の中心はドイツ、アジアではシンガポールが中心でしたが、そこで中国でも展示会を発達させて世界から人を呼び込みたいと思ったのでしょう。当面の目標は展示会産業でアジアのナンバー１にし、将来的にはドイツメッセと同じような規模にまで広げようと考えました。とにかく世界から人を呼び込みたいと考え、今まで未開の分野だった展示会産業に参入したわけです。
――展示会産業はどれほどまで拡大した？
張 現在では年間6000ほどの展示会が開催されています。上海で開かれる展示会が一番多く、主催者は政府やその周辺団体のものが活発となっています。展示会事務局は大きく３つの仕事、�‘�本での宣伝、��中国展示会への出展誘致、�Ｍ莨貅圓鯀�やすために旅行社とのタイアップ、連携、視察ツアーの企画――に従事しています。
――その努力があって成功している。
張 毎日出展問い合わせがあり、出展要請も後を絶ちません。以前は製造業から合弁相手を探してくれないか、工場のための立地条件のいいところを探してくれないか、という問い合わせが多かったのですが、現在は幅広い産業から中国での販路を開拓したいという声が多くなっています。
また、中国で製品を販売するためにマーケティングを代理店経由で行ないたいと考えて、販売ネットワークの問い合わせも増えています。
――代理店は難しいのでは、中国ペースにならないか？
張 懸念は代金回収の問題です。遅れることや、未払いとなるケースを否定できません。中国の言葉に「三角債」がありますが、それが日本企業にとって痛手となっています。
しかし、それでも日本企業として、攻めたい気持ちは変わらないのでしょう。やり方次第でうまくいっている企業が多くありますから。例えばコマツがその一例で、40％の利益を中国で出しているでしょう。
――明るい話題だ。
張 しかし、進出に失敗している企業もあります。それは中国の現状を知らなかったり、知っているつもりで終わっていたり、日本と同じようなやり方で対処していることが原因のようです。そうしたことを少しでも解消するために、駐日事務所を多く利用してほしいものです。先日も防災会社と打合せしましたし、大企業、中小企業を問わず利用していただいています。
――今後どうなるか。
張 ますます中国に進出するでしょう。展示会産業から始まった駐日事務所の機能ですが、そのおかげで様々な産業と接するようになりました。食品機械や包装機械などの製造業とは長く接点を持ってきましたが、現在はバイオや医薬、健康食品分野が伸びてきています。
――漢方薬を開発した国、中国は成熟しているはず。入る余地がなさそうだ。
張 その逆ですね。中国人は漢方薬の知識はあっても、“健康食品”という意識がまだありません。経済成長を遂げるまで中国人は決して豊かではありませんでした。裕福になって初めて“健康”を重視するようになったのです。それまでは“食べる”ことに精いっぱいで、それにお金をかける余裕がありませんでした。
日本には健康食品の食材を食べやすくしたり、飲みやすくする技術があるので、今後中国市場に活かすことができるでしょう。中国の裕福層はまだ一割程度ですが、その背後には中間層が控えています。彼らは４〜５億人いるとも言われています。目の前にある人数だけでなく、これから先を考えると、ビジネスチャンスの地盤を築くことができるはずです。