極洋、井村屋のEC躍進を支援
多機能カートで顧客接点づくり推進
�螢─璽肇ゥ献Дぁー更毀魄�メルカート局長 渡邉章公氏
ＥＣサイト構築パッケージの販売で国内シェアトップのecbeing（東京都渋谷区）のグループ会社、エートゥジェイ（東京都港区）が提供する販促・ＣＲＭ（顧客管理）機能一体型のクラウド（SaaS）型ＥＣカートシステム「メルカート」が大手の食品メーカーや外食チェーンで採用が広がっている。
特にここ数年は引き合いが強く、「コロナ禍をきっかけに消費者とダイレクトに接する機会を増やそうというニーズが高まっている」（渡邉局長）。ＥＣサイトを取り巻く最新トレンドについて聞いた。
――「ＥＣカートシステム」は最近よく聞かれるが、どのような仕組み？
渡邉 ＥＣカートシステムは消費者がサイト上で選んだ商品をカートに入れて決済手続きまで簡単に済ませる仕組みで、自社で構築するよりも費用を抑え、短期間で導入できるのがポイントです。
購入者にメルマガやクーポンを発行したり、会員限定商品を販売したりできる多彩な機能を備えるため、購入者との接点を重視する企業で利用が広がっています。出店料の負担が大きく、購入者とコミュニケーションをとるのが難しい既存のショッピングモールから切り替える動きも出始めています。
ＥＣカートシステム「メルカート」サイトのトップ画面。大手の食品メーカーや外食チェーン
で採用が広がっている
ウェブ広告だけでは集客に限界
――エートゥジェイが提供する「メルカート」の特長は？
渡邉 競合他社に比べて商品検索や販促、購入分析、ＣＲＭなどの各種機能が豊富で、顧客のニーズに合わせてカスタマイズしたり、追加機能を低コストで実装したりできるため、事業規模や成長段階に応じた柔軟な運営を可能にします。
さらに、サイト立ち上げ後はターゲットを明確にしたプロモーションの企画や動画などのコンテンツを活用した誘導・集客、購入分析、サイト改善などを専門スタッフが伴走支援し、売上げアップへとつなげています。
――食品業界で導入が増えている。売上げなどの成果は？
渡邉 導入先のサイト売上げは軒並み好調で、極洋の公式通販サイト「キョクヨーマルシェ」は前年度比300％を達成しました。吉野家、神戸屋、フジッコなども導入しており、井村屋は売上げを100％増、リンガーハットは150％増に拡大させています。
――非常に高い伸びだ。従来の通販サイトと根本的に何が違う？
渡邉 従来の通販サイトはマスに向けた情報発信がメインでしたが、今はデジタル環境の中でお客様とどう接点を持つかが重要になります。ＳＮＳに慣れ親しんだ消費者は以前のようにウェブ広告だけでは集まらず、双方向コミュニケーションが集客や売上げ獲得のカギを握ります。
とくに最近注目されているのが「ＵＧＣ（User Generated Contents）」と呼ぶマーケティング手法です。
極洋の公式通販サイト。「メルカート」導入で売上げを大きく伸ばすことに成功した
「ユーザー生成コンテンツ」がトレンド
――どのような手法？
渡邉 インスタグラムやTikTokに代表されるユーザー生成コンテンツのことで、企業が一方的に発信する情報よりも同じ趣味やし好を持った人が発する情報のほうが共感を呼びやすいと言われています。こうした投稿機能を搭載する通販サイトは増えています。
――確かに極洋も消費者がインスタグラムに投稿した缶詰の料理レシピを写真やコメントと一緒に掲載している。
渡邉 通販サイトに料理の投稿写真を掲載するとお客様は喜ぶし、企業にとっては新たな使い方の気づきが得られます。ユーザー接点の好例と言えるでしょう。
インスタグラムを見た消費者が通販サイトを訪れる誘導効果も高まっており、企業主導型ではなく、消費者を巻き込んでコンテンツを充実させるほうが売上げ増に直結しやすいのです。
オンラインとオフラインの連携が進む
――通販サイトに対する企業側の意識も変わりつつあるのでは？
渡邉 これまではオンラインとオフライン（小売店舗）の担当部署は縦割りのところが多く競争意識が高かったのですが、今はオフラインのお客様をオンラインに誘導し、継続的にコミュニケーションをとった後で再度オフラインに戻すという全体設計を描く企業が増えています。いわゆる「ブランドファン」をオンラインで育て、リアル店舗でも商品を手に取ってもらえる相乗効果の仕組みづくりが今後広がるとみられます。
このオンラインとオフラインの連携にはポイントカードの統合などシステム変更が必要になりますが、当社はＥＣサイト構築パッケージで国内シェア１位の強みを活かし、グループ会社全体でフルサポートが可能です。
経営層の参画が事業成功のカギ
――食品企業のニーズが高まっている。今後も成果を出す企業が増えそう。
渡邉 そうですね。ただし、通販サイトを成功させるには経営層や幹部層のコミットが重要です。通販サイトの担当部署は往々にして少人数で販促予算も少ない。経営層の号令や理解がないと社内における立場は一層弱くなります。
あるアパレル会社のケースでは、リアル店舗に在庫はふんだんにあるのにＥＣ店には回してもらえないことがよくありました。お客様は購入目的でサイトを訪問しても在庫不足で買えず、結果売上げが上がらなかった。そこで当社がＥＣ店の担当者と一緒に会社に働きかけて組織改革を行ったところ、売上げが８倍に伸びました。
――８倍はすごい。
渡邉 在庫を回してもらうまで約１年を要しましたが、今は全店舗の中でＥＣ店が最も売上げが多い。こうした事例からも経営層の強力なコミットがＥＣ事業推進に欠かせないということがわかるはずです。
――通販サイトは機能や仕組みを含め変化のスピードが速い。「メルカート」の提案にも力が入るのでは？
渡邉 食品と通販は相性が悪いとこれまで言われてきました。実際、既存の流通網とＥＣの売上げを対比した「ＥＣ化率」で見ると、全産業の中でも食品業界は最も低い。
しかし、コロナ禍で潮目が変わったように感じます。食品メーカーの参入が加速し、収益化につなげる成功事例が相次いでいます。そのことを支援してきた「メルカート」はこのほどシステムを全面刷新し、販促、ＣＲＭ機能などを強化しました。食品業界の需要増とニーズの高度化に対応し、今後も直販事業の成長拡大に貢献していく考えです。
「通販サイトを成功させるには経営層や幹部層のコミットが重要」と語る渡邉局長
(わたなべ・あきひと）2010年に��ecbeing入社。エンジニアとして様々なクライアントのＥＣサイト構築支援に従事。16年からSaaS型のＥＣプラットフォーム構築に参画し、18年新サービス「メルカート」を立ち上げ。20年にグループ会社のエートゥジェイへ事業と共に転籍し執行役員に就任、現在に至る。1985年10月福島県生まれ、38歳。