野口正見氏「5S活動による食品工場改善」連載開始

     野口正見氏

 ニチレイの生産畑を長年歩んだ野口正見氏。現在はその豊富な経験を活かし、食品技術コンサルタントとして、生産管理や品質管理を指導、中でも5S活動の指導を得意としている。工場長や社長として赴任し、生産現場を意識改革させた成功事例は聞き逃せない。
 シリーズ「よりよい食品工場をつくる5S活動エピソード」――。今号から連載スタートする。

プロフィール
 (のぐち・まさみ)1961年日本冷蔵(現・ニチレイ)入社。高槻食品工場(現・ニチレイフーズ関西工場)工場長、食品技術部長、取締役生産部長を経て、1997年6月グループ会社の千葉畜産工業の代表取締役社長に就任。2003年6月退任、同年9月食品技術コンサルタントを開業、現在に至る。

よりよい食品工場をつくる5S活動エピソード −1−
掃除の威力

 食品メーカーの工場長、社長として、またコンサルタントとして5S活動の実践による企業風土の改革に取り組んできた。
 1996年(平成8年)カイワレ大根の大規模な食中毒事件(0-157腸管出血性大腸菌)をきっかけにして、食の安全性への不安を抱かせる重大事件が連続して発生した。消費者は事件が報じられるたびに用心深くなり、食の安全に賢くなり、より安心できる食材、食品を求めるようになった。
 生産現場ではこれにより、今までの「生産第一」から「品質重視」、「安全で安心して食べられる商品作り」へその風土を改革しなければならなくなった。

 この企業風土の改革のツールとして取り上げたのが「5S活動の実践」であった。整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ)である。昔からの教育の手法であり、あまりにも当たり前で誰でも出来ることと、頭では分かっていても、組織的に継続して実践できていなかったことである。
 しかし、5S活動は社長、管理職、従業員の心を変える、即ち企業風土を品質重視に変えることで非常な効果を発揮した。特に印象に残る事をエピソードとして紹介しよう。
 「5S」の中でも「掃除の威力」はすばらしく、事例を紹介したい。
 5S活動の難しさであり、ポイントでもあるのは全社一丸、全員参加で取り組まねばならないこと。遅くとも確実に前進する「カメの文化」を意識し、全員参加を働きかけ、一歩ずつ正攻法で前へ進む事が成功への近道である。