特殊冷凍機「アートロックフリーザー」発表
高級江戸前握りの冷凍販売を実現
「特殊冷凍技術」を使った冷凍加工のソリューション事業を展開するデイブレイク��（東京都品川区、木下昌之社長）は初の自社開発となる特殊冷凍機「アートロックフリーザー」の発表会見を本社ショールームで10月27日開いた。会見には東京南麻布の高級江戸前寿司店「鮨心」の中村導昌社長も同席し、自ら握った寿司を急速凍結する実演を披露した。
「アートロックフリーザー」は氷結晶を小さく生成してドリップを流出させないことはもちろん、独自の原理に基づいた冷気の当て方（マイクロウインドウシステム）で食材から熱を効率良く奪い、乾燥や変色といったダメージを抑える。また、庫内の隅々に冷気を送ることで、食材をどこに置いても安定品質を可能にする。外気温の変化による影響を電子制御して凍結性能を維持する機能（スマートフリーズ）も備える。
スタイリッシュなデザインが特徴の「アートロックフリーザー」、右２台がエアブラスト、
左端はリキッドタイプ
木下社長（左）と中村社長
「冷凍寿司の評価を変えたい」
鮨心はアートロックフリーザーを使った冷凍の江戸前握りを「シン握り」として商品化し、自社サイトや楽天市場などの通販で９月から販売している。高級寿司を冷凍で販売することに周囲からは厳しい見方もあったというが、中村社長は「冷凍寿司はおいしくないという古い考えを変えたかった」と語る。
この日は宮城県の塩釜港に揚がった本まぐろや佐賀県産の養殖真だいの昆布締めを−35℃で25分間凍結した後、−20℃で12時間熟成させ、自然解凍したものを記者団に振る舞った。ネタはひんやり、シャリはパサつきがなく、握りたての味わいを再現していた。
寿司は乾燥に弱く、特にシャリは冷凍すると白ろう化して固くなるため凍結は難しいとされてきた。そこで、デイブレイクは米の水分量を変えたり、赤酢の割合や原料の調整を繰り返すなどして最適解を導き出した。これによって「シン握り」は家庭で自然解凍してもおいしく食べられるように仕上がった。
中村社長は「当店は10席しかないが、アートロックフリーザーを導入することで全国、世界中に私が握った江戸前握りを提供できるようになった」と喜ぶ。
木下社長は「特殊冷凍技術があれば通年で鮮度のいい料理を安定供給できるうえ、大量に獲れた魚の廃棄ロスにもつながる」と語る。
寿司は裸のまま投入しても高品質に凍結する
コロナ禍で問合せ急増
デイブレイクは食材の選定から前処理、凍結、保管、解凍まで一連の工程について、最適な方法を導き出すノウハウと豊富なテストデータを持つ。冷凍機を単に販売するのではなく、おいしさの価値を最大化する凍結法から商品開発、売り方までトータルでサポートする。コロナ禍の影響で外食や小売り、一次生産者からの問合せが2020年２月以降月間500社に急増しており、月次の売上高はコロナ前に比べ５倍に拡大した。
今回の自社製品の開発には、冷凍研究のデータを落とし込んだり、ユーザーの声を拾い上げたりして定期的にバージョンアップさせ、特殊冷凍機専門商社の機能を拡充させるねらいがある。木下社長は「アートロックフリーザーを軸に冷凍加工のソリューション事業を加速し、冷凍食品の経済価値を高めたい」と意欲を示す。
−35℃で25分間凍結した握り寿司、「アートロックフリーザー」はいわしの天ぷらとフライ
（左上）の冷凍販売にも使われている