米の持ち味、いまだ余地あり
サタケ 東京本社統括 執行役員 沖原 健氏

 精米機や炊飯ラインなど“米”の加工機を幅広く手がけるサタケ。取り引きが途絶えていたミャンマーとの交渉をこのほど再開した。米がつないだパートナーとの新たな展開に期待を込めている。国内向けには、米の隠れた力を引き出す装置の開発に成功した。

    沖原執行役員

 ――日本食品機械工業会の広報委員と国際委員も務めている。
 沖原 赴任先の中国から帰国した後、今年の5月から務めています。“サタケ”以外の視点から日本の食品機械業界を考える機会を得ることができ、よい経験となっています。

 ――国際委員というのは。
 沖原 日本の食品機械を海外にアピールするとともに、投資意欲が強い海外のメーカーを調査し、積極的に日本に来てもらおうと働きかけています。FOOMA(国際食品工業展)への招待もその1つです。

 ――海外とのパイプ役だ。
 沖原 “日本の食品機械を採用したい”と考える海外のユーザーは多くいるのでしょう。あとはその国の国内消費力と、導入する機械の価格のバランスなのですが、これにはズレがあります。当社が扱っているような精米機であれば、中国のローカルメーカーの機械に比べて2倍、3倍も価格差があり、現地メーカー製で満足する企業が大半です。

 ――海外はどの地域を特にターゲットにしている?
 沖原 米の生産地であり、消費地でもあるアジア諸国が多いですね。製造と販売の拠点を海外に初めて設立した国もタイでした。その後中国にも進出し、1998年に拠点を構えました。現在駐在所は中国全土に6カ所数えます。中国では設立当初、売上げをかなり伸ばしたのですが、現地メーカーもかなり力をつけてきました。コピー機種が多いのですが、とにかく安く、彼らとの競争が激化しています。

 ――米を加工する機械だけあって、比較的早い段階からアジアに進出した。
 沖原 実はミャンマーとも軍事政権が発足する前から取り引きがありました。代理店を置いていたこともあり、当社で大規模な精米工場を建設したこともあります。軍事政権になってから、休眠状態になっていましたが。
 先日ミャンマーの農業視察団が来日しましたが、私はその団長や現地企業の代表と面談しました。民主化が進み、関係が復活することを期待しています。

 ――国内では。
 沖原 米の消費量が落ち込んでいるのが深刻です。1人あたりの消費量が東京五輪の頃は年間120kgありましたが、今ではその半分と言われています。この状況をなんとかしようと米粉を使った商品が開発されていますが、まだ微々たるものです。麺やパンの開発など市町村レベルで動いていますが、ナショナルブランド的なものではありません。事業として成立するにはもう少し時間がかかりそうです。

 ――米粉向けの製粉機を手がけている。
 沖原 製粉機は後発ではありますが、当社の持ち味を出しています。精米技術がベースとなっており、麦の表皮を削って製粉にします。雑物が少なくて、白いきれいな粉ができます。おいしい麺ややパンが作れると訴求しており、徐々にですが導入を伸ばしています。

 ――今後の展望は?
 沖原 国内の米の消費量は落ち込んでいるものの、機能性食品としての米の隠れた力を全面的に訴えていかなければいけません。そこで“ギャバ生成装置”を開発し、今年から本格的に提案しています。“ギャバ”とは米などの植物に含まれている機能性成分で、ストレス軽減や中性脂肪の抑制など様々な効果が期待されています。しかし、精米すると胚芽部が取り除かれ、ギャバも大幅に減少してしまうのが難点でした。
 この装置では、原料玄米の胚芽中のギャバを生成して胚乳部に吸収させ、ギャバを豊富に含む米を生成することができます。今年のFOOMAで紹介しましたが、“ギャバって何?”と来場者は興味を示してくれました。しかし、それだけ今まで周知ができていなかったことになります。“サタケ”は米とともに成長してきた会社です。消費者に対する啓発が不十分だったことを反省し、機器メーカーの立場から米の持ち味を伝えていければと思います。