“量った先をフォローする”、新ジャンル「定量計量専用機」

 大和製衡は同社初となるデジタルハカリをジャパンパックに出展、販売を本格化させる。デジタルのハカリではあるが、既存品とは一線を画し、あえて新ジャンル「定量計量専用機」と銘打ってデビューさせた。量ることの精度を格段に向上させたのはもちろん、量った先をフォローし、生産活動の課題解決策を明示する。まったく新しいタイプの装置が誕生した。

     定量計量専用機「Pack NAVI」

 製品名は定量計量専用機「Pack NAVI」。自動化が困難で、作業スピードや精度・歩留まり、量目不足など課題の多い農産物(生姜、しいたけ、レンコンなど)や水産加工品(魚卵、切り身魚、貝の剥き身など)、惣菜加工品(サラダなど)の定量詰め作業の効率化をコンセプトに開発した。
 通常、比較的大きな品物を定量作業する場合、適量にするために「載せ替え作業」が伴う。だが、「載せ替え作業」を何度も繰り返すと、効率が悪く、生産性も高くない。そこで、Pack NAVIの“交換指示機能”を使用すると、載せ替えを行う品物の大きさを「大・中・小」と指示表示。どれとどれを入れ替えると定量になるかをナビゲートする。
 例えば、じゃがいもを500g計量する場合、455gのところに“小”のじゃがいも1個を「追加」する、あるいは553gので“大”のじゃがいも1個を「取り除け」ば、ターゲットの500gになると案内する。装置が視覚的に教えてくれるので、作業者は何をするべきかをすぐに把握できる。何回も載せ替えを行う必要がなくなるのがポイント。
 
 歩留まりも向上する。上限・下限値を設定するだけで、計量作業の途中で不足質量、あるいは超過質量を表示する。“ジャスト計量機能”はあとどのくらいの量を載せるか、取り除けばよいかを画面で表示する。しかも上限・下限値範囲内の判定をブザーと3色LEDランプで知らせてくれる。
 さらに、「あと何g」ではなく、“数量”でも指示する。同じような重さの品物を定量詰めする場合、過不足量を“質量”で表示するよりも、載せ降ろしする“数量”を指示することで作業効率がアップする。“不足数量表示機能”は1個当たりの平均質量を記憶することで、目標値に対しての過不足量を表示する。
 手作業による計量包装の場合、手作業は細かな作業も柔軟に対応することができるが、作業者の能力に差が発生しやすい。Pack NAVIの機能をそれぞれのシーンで有効に活用すれば、熟練者や初心者の作業性の差をなくすことができ、効率が良く、安定した生産活動につなげることができる。

量るだけでは終わらない、作業実態が見えてくる

 Pack NAVIのもう一つの特徴は、作業の見える化。「むしろ、こちらの機能を大変評価していただき、導入を決めたユーザーもいます。今まで見えなかった作業実態がわかるようになり、今後の生産活動の対策に役立てられます」と説明する。サブ画面にはユーザーが知りたい情報を任意で設定できるようになった。
 スタンダードの風袋、総重量表示だけでなく、現在の生産数や平均値など作業者の作業実態を管理する情報の確認を可能にした。計量の不足質量や超過質量も把握できる。
 導入を決めた食品メーカーでは、きのこの計量包装作業を手作業に頼っていた。きのこを計量包装する場合、機械化もできなくはないが、最終商品の見栄えを重視し、きのこの傘の部分を表面に向ける必要があるため、手作業が欠かせない。そのため工場では多くの工場スタッフが働いている。
 スタッフの作業スピードは速いが、NG品が多く、正確さに欠ける人、あるいは、規定値以上にきのこを入れる傾向の人など様々。しかし、計量包装後のきのこは一つのラインにまとめられるため、誰が作業したものかはわからずにいた。
 このPack NAVIは装置自体に数値を記憶できる。作業した人の傾向が数値として一目瞭然となる。今まで見えなかった数値がデータとして見えてくるので、「この傾向のスタッフにはこういう指導が必要」と今後の業務改善のアイデアが、現場で次々起こっているという。
 手作業は柔軟性が高いが、大量生産になれば人件費、歩留まりが悪くなってくるので、管理指導に労力がかかる。Pack NAVIは様々な機能で計量作業を効率化し、作業者による能力の差異も解消できる。作業実態も見える化できる。
 「こういう装置を待っていた」と工場長だけでなく、経営層からも支持を得ることができた。「目方を表示するだけがハカリではない。量った先をフォローし、作業効率の改善をサポートできる」と同社。名前の“NAVI”に込めている、量った先の解決策を“案内する”という思いを強く感じさせる製品が誕生した。

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2015年10月7日号掲載