自社専用農地から原料野菜を調達
ＦＤ食品中心に中国内販事業拡大
中国の冷凍食品工場訪問「慈渓永進冷凍食品」
中国浙江省慈渓市（寧波）の冷凍食品企業、慈渓永進冷凍食品有限公司（劉貴坪董事長兼総経理）を訪問した。同社は台湾の永進グループと、マルハニチロ（出資比率16.7％）が出資する100％外資。
姚副総経理
慈渓永進冷凍食品は1993年11月に設立、95年８月フリーズドライ食品、同年10月冷凍野菜、翌96年３月調理冷凍食品工場が稼働を開始した。生産する商品の半分弱を日本へ輸出。「近年はフリーズドライ食品（ＦＤ食品）を中心に中国内販事業が拡大している」（姚慶発副総経理）という。
冷凍野菜は空豆、ブロッコリー、いんげん、枝豆、しいたけ、カリフラワー、ほうれん草、細切りねぎなどを生産。調理冷凍食品はかき揚げ、れんこん挟み揚げ、しいたけ肉詰め揚げなど、野菜を原料とした商品が主力。ＦＤ食品は即席麺用の具材となるチャーシュー、いか、えび、野菜などを生産している。
2001年５月に日本の農林水産省から偶蹄類、07年３月に家禽類の認定を取得。05年には厚生労働省から冷凍ほうれん草輸出認可農地の指定も取得した。07年９月に中国市場での販売に必要なＱＳマーク（食品生産許可証）を取得済み。工場周辺に自社専用の農場を843畝（約18万坪）持ち、播種から収穫までの管理は自社で徹底して行っている。
カットした野菜とバッターを混合、かき揚げのもとをつくる
カットは種類に応じて機械と手作業で
原料野菜はコゲ防止のため糖度を調整
竹田工場長
工場の敷地は約１万坪。冷凍調理品、冷凍野菜、ＦＤ食品の３工場がそれぞれ独立して建つ。工場周辺はいまでこそ住宅が立ち並ぶが、「工場設立当初は野菜の集積地。海にも近く、新鮮な魚介類が集まった」（竹田知博冷凍調理工場長＝マルハニチロから出向）という立地。上海からは直線距離で約150�辧⊃郡汗�で寧波まで約２時間の距離。
工場の従業員は冷凍食品とＦＤ食品、その他を含めて約500名。機械化の進行と共に従業員数は確実に減っている。
視察した調理冷凍食品工場は、マルハニチロの品質保証部が定める手順に沿って入場する。白衣に着替えた後、粘着ローラー掛けするのは大半の工場が実践しているが、ここでは眉毛にも粘着テープをあて、落下防止が求められる。エアシャワーを通り、手洗いと消毒を済ませてから場内に入るシステム。
原料野菜は外皮を取り除き、水洗いした後に下処理工程に搬入。にんじん、小松菜などは地場産、玉ねぎは山東省の契約農場から運んでいる。機械を使って各規格にカットしているが、小松菜は手切りでていねいにカットしている。野菜の糖度をチェックして、水に晒して３〜５度に調整するのは「糖分が高いまま揚げると焦げ過ぎる」（竹田工場長）からだという。
かき揚げの油調ライン
主力の「かき揚げ」は日産約３万個
号令に合わせて油調、揚げムラ解消
かき揚げは、顧客の要望によって型枠を変え、厚みとサックリ感が出るように整えながら、人手で油に投入する。２連の型に衣をつけたタネを投入するタイミングは場内に流れる音声の号令に合わせて、12ラインが一斉に行う。型抜きのタイミングも放送と合わせることで、コンベアで強制的に油中を通ったかき揚げの揚げ時間が統一され、ラインによる揚げムラが防げる仕組み。
主力のかき揚げは１日に約３万個を生産。追加のトッピングがある場合は、どうしても作業性が落ちる。油調後は冷却後、ＩＱＦ凍結。使用する粉の規格は顧客によって異なる。場内で使用する容器やトレーは異物混入を防止するため、ほぼステンレス化している。
形状不良は凍結前に取り除き、凍結後に再度重量と高さをチェックし、金属探知機とエックス線を通してから包装、箱詰めする。
原料、半製品、最終製品の３段階で、１日150検体を抜き取り検査する。一般分析の他、微生物検査、農薬や抗生物質などの精密検査も行う。
監視カメラはもともとあったが、フードディフェンスを強化するため、カメラを増設した。録画した画像は１年半保存する。
姚副総経理、竹田工場長は今後の課題について「安全安心を担保した上で、生産の効率化・自動化をさらに進めたい」と声を揃えて強調する。フードディフェンスの強化についても取り組んでいる最中で、リスク評価後、今年度中には形にする予定だ。
油調後、フリーザーに入るかき揚げ
型崩れしないようていねいに箱詰めする