日東ベストの大沼一彦常務は生産副本部長として天童工場(山形県)だけではなく、全社の設備関係を担当する。同社は今期、20億円の設備投資を行っているが、昨年5月に高松工場(山形県寒河江市)に3億6000万円を投じて茹で麺ラインを増設。9月には本楯工場(同)のハムカツライン強化に5500万円。10月には天童工場(山形県天童市)のタルトライン増設に2億5000万円、関西ベストフーズ(滋賀県甲賀市)のハンバーグライン増設に5億5000万円を投資している。
日東ベストの大沼常務
――天童工場は昨年10月に2本目のタルトラインを増設した。
大沼 既存のタルトラインは焼き菓子ですが、新ラインは焼き菓子だけでなく、新カテゴリーの可食容器も作ります。焼いた生地の容器ごと食べられる惣菜向けの商品で、本格的な生産はこれからです。
――天童工場は2006年にロールケーキのラインを新設し、一昨年にもカップゼリーのラインを増設している。
大沼 天童工場は30年以上前の1977年(昭和52年)からカップデザートを生産開始しています。当初はプラスチックの容器を使い、主に120gくらいのオレンジゼリー、ワインゼリー、プリンなどを生産していました。ところが今は小さくなって30gや50gの商品がメインです。しかも学校給食は地産地消の流れなどもあって小ロットの商品が増えています。一昨年に増設したのはこうした小ロット向けのラインです。
――アイテムはどのくらい?
大沼 いまやデザートのアイテムは410品もあります。天童工場生産全のアイテムが680品ですから大変なもの。
――多品種小ロット向けのラインといっても、充てん能力は既存のものと変わらない。
大沼 充てんスピードを遅くして、生産能力は半分に落としています。決定的に違うのは包装ライン。ステッカーを貼ることができるようにしたのは印刷包材を大量発注しなくてもいいように。そのステッカーがずれていたりはがれたりしたら、自動的に見つけ出すようカメラを備えています。生産能力は1/2ですが、前処理や包装のリーダーは両ラインを兼務するようにし、人員は1/2以下に抑えています。切り替えのロスはどうしても出ますけどね。
――効率化については、全社的にNBS(日東ベストサバイバル)活動を進めている。
大沼 ムダとり運動と言いますか、基本的には5Sを中心にラインのトラブルやクレームを減らすこと、つまりミスを減らそうとしています。天童工場ではこの種のトラブルが前年比50%減と効果をあげています。
――今年の設備投資は?
大沼 東根工場のトンカツラインと肉関係の品質に関する設備投資をすることになるでしょう。東根工場のトンカツは既にほとんどライン設計ができていて、6月にスタートする予定で進めています。トンカツは寒河江工場でも生産していますが、生産効率は東根工場、開発を要する新しい商品は寒河江工場という感じで棲み分けています。肉商品の品質に関する設備投資は、牛丼ラインで6月ごろスタートの予定で進んでいます。
――世間では派遣切りが問題になっているが、御社の社員はほとんどが地元。仕事量の波はどのように対処している?
大沼 天童工場だけでも330名の社員とパートが働いていますが、今のように多品種生産になると仕事量の波が起きやすくなります。しかし、当社は60歳から65歳で一旦退職した人でもバイトのように働いてもらう制度があります。そうしたOBと呼んでいる人が20〜30人いて、必要な時に働いてくれます。電話で「明日お願い」と頼めば出てくれる人もいます。歳をとったからダメと言うのはおかしいわけで、むしろ食品製造のことを良く知っている人たちばかりなので大変助かっています。各工場でOB会もあり、天童工場でも年に一回の集まりには社長が参加してくれます。
――地域密着ですね。育児室を備えた工場もあり、そこで育った人が社員になるケースもあると聞きます。
大沼 ありますね。従業員の皆がそれぞれに面識があり、会社に対する帰属意識も高いので、当社は辞めていく人は少ないです。