自動化と“人材力”で需要増に応える

 テーオー食品は生産量が増えている「生おろししょうが」ラインを自動化するため、工場を随時更新している。印字のチェック装置やロボットパレタイザーを導入して間もないが、精度と速度で成果を上げている。しかし、オートメーション化しつつ、人材の育成にも余念がない。

X線異物検出機と印字画像検査機で
幾重にもチェックしている

 所沢工場の「生おろししょうが」ライン包装工程では、賞味期限の印字を画像処理でチェックできる装置を新たに導入した。「自動化が進むにつれ、スタッフの目が離れる工程が多くなった。“スタッフが確認していれば食い止めることができたはずなのに”と絶対にならないよう、ユーザーに迷惑をかけないよう、万が一の不備を未然に防ぐため」と幾重のチェックに気を引き締めている。
 生産量が増え、人手では処理が追いつかなくなったため、製品をパレットに積み付けるロボットパレタイザーを2年前に導入した。手作業だった頃は、パレットに積み付ける際、高さはパートナー社員である女性の身長に合わせていたため、体格に差のある男性社員の腰を痛める原因となった。パレタイザーの導入により「仕事の速度が上がったと同時に、身体への負担も解消できた」と満足している。
 また、ロボットの導入をきっかけに、手作業ではできなかった、段ボールのカウンタリングも同時に叶えている。

ロボットパレタイザー

 オートメーション化に向けて更新を加速させているが、人材の育成にも余念がない。
 しょうがの原材料の仕入れは単に買い付けるだけでなく、四半世紀以上のパートナー関係にある中国の生産者のもとへ、所沢工場の担当者が多い時には月に数回現地を訪れ、自分たちの目で確かめて調達する。これは同社が創業以来続けているこだわりの1つ。その年、その月で、しょうがの発育状況は変化するが、商品に最適なものを調達するための見極めが必要。人材が育たなければ、いい商品も生まれない。
 また、しょうがとともに、同社のもう一つの主力商品である「カレールゥ」でもスタッフの技術力がキラリと光る。「職人的要素が最も大きい」と称するカレーライン。製粉時に熱を発生させないよう開発したオリジナルの24連式スタンプミルや、焙煎に使う直火焼き釜が活躍しているが、欠かせないのはスタッフの判断力。火加減や風味は機械だけでは割り出せない。「均一のカレールゥに仕上げるには、スタッフの経験に頼る部分が非常に大きい」という。

新たな生産拠点も視野に

じんじゃーむ
ヨーグルトやトースト、炒め物や
生姜焼きなど利用方法は幅広い

 昨年秋、新商品として「じんじゃーむ」を市場投入した。コンセプトは「しょうが屋さんが作ったジャム」。しょうがとともに生きてきた姿勢や、プロの目線だからこそできる開発力をすべて商品に詰め込んだ。今まで販路が弱かった製菓製パン業界からも引き合いがあり、ルート改革に期待を込めている。
 この冬も節電対策が続いている。そこで「電気を使わず、体を内側から温められる」としょうがの良さが注目を浴びている。居酒屋でも「しょうが鍋」が人気という。同社もこの“しょうがブーム”に万全の態勢で応えたいところ。
 操業開始から45年が経つ所沢工場。竣工当時は周囲に何もなかったが、今では住宅地となってしまった。商品アイテムが増えるたび、生産棟を新設してきたが、敷地も手狭になってきた。
 「香辛料を生産する以上、ニオイには細心の注意を払っているが、その対応も難しくなってきた。そう遠くないところで、別に生産の場を設けることができるならば」と新たなスタートも視野に入れている。