名倉社長
食品工場の容器洗浄機でシェアトップのクレオ(東京都中央区)は中期経営計画(2021〜2025年)で掲げた最終年の売上高目標156億円を達成するため、全社挙げて社内改革を推し進めている。コロナ禍や半導体不足など外的要因による負の影響は少なくないが、名倉社長は「下方修正するつもりはない。高い目標を維持する」と力を込める。
今年も経営環境は予断を許さない状況が続くとみられる。同社は社員一丸となってさらなる成長をめざす。
――前期(2021年12月)の業績は?
名倉 売上高107億円の目標に対して約99億円で着地する見込みです。昨年9月までは計画通りに推移していましたが、後半から半導体などの部品不足で大打撃を受けました。12月までに納品できない案件が多くあり、いわゆる「期ズレ」が発生しました。モノをつくりたくても部品が入ってこない状況が続いています。
――どのような部品が入ってこない?
名倉 半導体をはじめタッチパネル、サーボモーター、ブレーキユニット、樹脂製の押しボタンなどです。さらにここにきて乾燥ラインに使う大型ブロワ用のモーターも入らなくなりました。あらゆる製品に関わるため、直接的なコロナ禍の影響よりもインパクトは大きい。
工場は少なくとも今年5月の連休までフル稼働が続く予定ですが、この先も部品が入ってこないと計画に変更が生じる心配はあります。
――コロナ対応としてはどのような施策に取り組んでいる?
名倉 コロナ後も見据えた新商品の開発と新市場の開拓をテーマに全従業員から製品アイデアを募るコンテストを行っています。一昨年の第1回では、これまでになかった様々なアイデアが寄せられ、実際に商品化を検討しているものもあります。昨年も12月にコンテストを実施しました。
――コンテストのねらいは?
名倉 既存の商品と市場だけでは今後大きな成長は期待できない。アイデア募集は新市場を取り込むための一環です。ただ、それ以上に良かったのは全社員が会社を成長させるために何ができるかを考えるきっかけになったことです。自分で考える習慣を身に付けたと思います。
――2020年の社長就任以降、営業体制を見直すなど組織再編を進めている。
名倉 これまで東京本社が統括してきた東北、関東エリアに新しい拠点を置き、それぞれに事業部長のポストを設けました。営業畑の人間を就け、各事業部の売上管理だけでなく、経費管理などすべてのマネジメントを任せるようにしました。
以前は自分の売上げだけに関心を持っていましたが、それを事業部全体の売上げから利益まで追うように意識改革を促しました。
――どうして組織再編を?
名倉 次世代を担う経営者を育てる必要があります。事業部の事業全体を見渡す経験がないのに、いきなり経営を担うのは難しい。担当エリアを複数経験してもらうため、長年いたエリアを離れる配置換えも行っています。それでも本人たちからは前向きな声が聞こえてきます。それと、組織改革には「地域密着」を強化する目的があります。
――どういうこと?
名倉 当社は機械、洗剤、メンテナンスが事業の3本柱ですが、以前は各部門がそれぞれ単独で動いていました。これを三位一体で地域のお客様をフォローする体制にしました。自分の担当以外の分野でもお客様の課題を互いに意識し、全員で情報を共有していく。そして、課題解決には連携して取り組む。すると自然にお客様を大事にしようという気持ちが芽生えます。
――コロナ禍で市場環境に変化は?
名倉 当社のメイン顧客はスーパーとコンビニですが、スーパーは設備投資が堅調です。コンビニは緊急事態宣言時に動きが鈍化したものの、スーパーが好調であったおかげで結果的に当社はダメージを受けずに済みました。ここにきてコンビニは回復基調にあり、特にベンダー大手は設備投資に意欲的で、当社も受注を伸ばしています。
――今期(2022年12月)の売上げ予想は?
名倉 116億円を目標としています。中期経営計画(2021〜2025年)では2025年に売上高156億円を達成する目標を立てました。外的要因による影響は見通せませんが、私は下方修正する気はありません。この高い目標は今後も維持し続けます。
(なぐら・とよお)1961年大阪府生まれ。1985年クレオ入社。大阪、東京で営業に従事した後、1991年名古屋営業所の立ち上げに携わり、初代所長。2008年大阪事業部長、2013年取締役。名古屋事業部、大阪事業部、九州事業部を統括。2020年2月社長就任。入社当時、十分な営業カタログがなかった時代、手作りのパンフレットを持ち歩いたり、トラックに洗浄機を積んで自ら運転し、営業先を回ったりして取引先を広げてきた。その頃作った営業マニュアルは現在も社員教育用に使われている。近畿大学商経学部卒、60歳。