「着霜」抑制で高効率化、躍進する新冷凍技術
中山エンジニヤリング 代表取締役 中山 淳也氏

 省エネ効果や環境対策などユーザーが冷却システムに求めるニーズは高度化している。しかし蒸発器への「着霜」が足かせとなり、ユーザーを悩ませている。中山エンジニヤリングの冷凍技術「イータマックス冷凍システム」はこの問題に挑み、大手の低温物流会社が新設する設備で全面的に採用、冷凍プラント会社も主力製品として販売している。

      中山社長

 ――低温ユーザーが注目しているイータマックス冷凍システム。市場への本格投入からまだ間もないが、躍進している。
 中山 以前から当社が施工を担当しているユーザーには導入していた技術です。クーラーメーカーの桜調温工業の協力を得て開発を進め、10年がかりで構築したものです。数年前から全国に販売代理店を設け「イータマックスチーム」を編成し、全国に販売網を広げました。先行していた北海道を中心に、他地域でもチーム会社が積極的な提案を繰り広げ、受注・見込み案件を重ねています。

 ――最近の引き合いは?
 中山 今年、或る物流会社が事業拡大を計画。新規事業として食品などの生活必需品を対象とした物流事業に進出するため、別の物流会社と合弁会社を新設しました。事業の第1歩となる、新設する物流拠点に「イータマックス」を検討していただきました。この別の物流会社というのが、従来から冷凍・チルド・常温の多温度帯で管理し、食品や飲料などを一括配送するノウハウを持っているわけですが、「イータマックス」に関心を持っていただいたようです。

 ――この冷凍システム、何がユーザーの心をつかんでいる?
 中山 ユニットクーラにおける着霜抑制や実効性のある効果的な省エネ手法による運転を実現したことが受け入れられています。凝縮圧力を下げて運転できれば、省エネにつながることは一般的に知られています。イータマックスは運用現場の気候をもとに、冬季の外気温から凝縮温度に使用可能な最低値を基準として、積極的に極限まで凝縮圧力を下げた運転ができるように設計しています。能力が最大に発揮される北海道などの低温外気の地域では、省エネ率が50%にも達しています。

 ――技術的にシステムが難しそうだが。
 中山 考え方はシンプルです。「温度差」に着目しています。蒸発温度と吹出温度の差(TD)を最小(5℃以内)にした運用を可能にしました。これにより負荷側の霜付量の低下や除霜回数を減らし、さらには冷却効率の上昇や庫内商品の昇華を抑制し、冷凍焼けを長期間防ぐことができるなどにより、保管製品にも良い影響を与えています。

 ――「温度差」と「着霜」の関係に注目した。
 中山 ユーザーにとって冷凍システムで最大の悩みは蒸発器への「着霜」です。一般的にこの問題は不可避と考えられ、従って短いサイクルでデフロスト(ヒーター、ホットガスなどによる霜取り)工程を行なっています。しかし、これは効率がよくありません。庫内の湿度を持った空気は蒸発器の表面に衝突して冷却されます。この時、蒸発器の表面温度と空気の温度差が大きければ大きいほど蒸発器表面への着霜が誘発され、さらにTDは大きくなります。

 ――悪循環とも考えられる。
 中山 従来の設計法では、設計時の温度差は10℃くらいとするのですが、ユニットクーラの能力数値を正しくとらえていないため運転状態で実際の温度差は12〜18℃以上の運転が一般的。頻繁にデフロスト運転を行なっているのが現状です。イータマックスでは、ユニットクーラ能力を正確に算定することと、非常に低い圧力差で分流精度を高める技術を応用しています。F級冷蔵庫の場合、設計時のユニットクーラTD値を6〜7℃で設計することが可能で、実際の運用でも設計通り再現できます。これにより蒸発器への着霜を驚くほど抑制します。導入を検討しているあるユーザーは1日4回行なっていたデフロストを、検証では1週間に1回と大幅に削減。非常に驚いていました。

 ――大手の低温物流会社、冷凍プラント会社も早々に「イータマックス」に注目していた。
 中山 冷蔵倉庫はどこも年数が経っており、建て替えの時期に来ています。ただ、建て替えとなると莫大な費用が掛かり、難しい場合が多いと思います。老朽化の度合いによっては、思い切ってスクラップ&ビルドをしてしまうほうが、効率的な場合もありますが、補修や改造で対応できるのであれば、冷媒の問題などを鑑みて冷凍設備の高効率化を検討することも一つの手だと思います。実際に築20年を越えた冷蔵倉庫に使われているユニットクーラの交換と、配管の改造などで、安価に高効率化を実現し、ランニングコストを削減できることから、大手の低温物流会社では、この対応策を実施しています。
 冷凍食品が発達し、低温物流の需要も増えていると実感しています。先ほど話した新設する合弁会社もその流れに乗った動きでしょう。私たちはその動きを的確に把握して、ユーザーに満足してもらえるシステムを開発し続けていくことに尽きます。

 ――着霜の問題など真っ向から挑んだ姿勢は脱帽だ。それがユーザーにとっても刺激になっている。
 中山 業界的には必要悪で当然のことだと通してきたもの、あるいは気づいてはいても、敢えて避けてきた部分もあると思います。この問題を克服するシステムや理屈はシンプルなものだと指摘しましたが、それを現実のものにするためには数値取りやデータ取りなど莫大な時間と労力がかかります。そこから逃げずに、また、時間を惜しまずに取り組んできたことが実を結んでいます。
 しかし、システムが完成しても、そこで終わってしまっては開発者の独りよがりにすぎません。その技術を評価していただき「使う」と判断していただくユーザーがいてこそ、私たちは活動できるわけです。こうしたユーザーとの出会いを大切にして、1社でも多くの方に喜んでもらえるよう働きかけていきます。