野口正見の「5S活動による食品工場改善」 −31−
5S活動を理解してもらうために

 B社は中堅の食品会社で、ほとんど受注生産・販売を業としていた。この会社の生産部長が退職し、後任が育っていないため、社長が生産担当を兼務していたが、とても管理が行き届かず、現場は混乱していた。
 そこで開発部長を生産部長に配転し、生産管理体制を建て直すべく、筆者はその教育を依頼された。2004年のことだった。
 最初の訪問で生産現場を案内されたとき、5Sの評価基準で不適合箇所を写真に撮ったが、その数は312箇所にも達し、生産現場は教育不在・管理不在の状態を呈していた。
 社長に写真で現状を説明し、生産管理、品質管理実践の基盤として最も重要な『5S活動』を切り口として、生産部長を教育し、また全社の活動として推進する方針を承認してもらった。

5S活動を理解してもらうために(1)

 従業員の身近なことから5Sを始めた。
 食堂は休憩室と兼用だったので、テーブルの上は個人の調味料や水筒、煙草、灰皿、読みかけの雑誌などが散乱していた。しかし、食堂は昼休みに食事をする場所であり、午後の英気を養い、同僚とのコミュニケーションを図る大切な場所である。
 調味料や水筒、煙草関係は収納棚を設置し、雑誌やその他の私物は個人のロッカーに収納するルールを設けた。これにより食堂は整理整頓され、清潔になった。
 また決められたルールを守ることによりこれらは維持され、特に女性の従業員には喜ばれ、5S活動のメリットを自分のこととして実感してもらった。この体験は生産現場でも同じ事として認識される。家庭でも同じである。
 
 5S活動は生活そのものである。会社も家庭も5S実践で幸せを呼び込むことができる。

水筒や煙草などの整頓、改善前(左)と改善後(右)