セブン‐イレブン・ジャパンはレジカウンターでドーナツの販売を本格化する。淹れたてコーヒー「セブンカフェ」との併売を狙い、潜在ニーズがある間食マーケットを掘り起こす。工場には新しい生産設備を導入し、配送時には商品特性に合わせた異なる包装形態を採用、店舗には専用の什器を置く。すでに関西エリアでの販売を10月下旬からスタートしており、来年夏までには全店に導入する計画。
「コーヒーマシンの隣に什器を置き、併売を狙う」と
鎌田商品本部長
全国24カ所にあるセブンイレブン専用のパン工場に、ドーナツ専用の設備を順次導入する。生地のもちもちした食感が特徴の「もちもちいちごリングドーナツ」には潜行式フライヤーを使い、短時間で両面を効率よく揚げる。これにより食感が良くなるという。さらに揚げ時間が短い分、油の吸収を抑えられるメリットもあると見ている。1日2回揚げ、製造後3時間以内に店舗に配送する体制を整える。
配送時の包装形態は商品特性に合わせる。定番の「チョコオールドファッション」は生地から出た余分な水分を袋の外に逃がすため、紙の包材を採用する。「白バラ牛乳のホイップドーナツ」は袋内から水分を逃がさず、適切な水分状態をキープするためフィルム包材を採用する。「もちもちいちごリングドーナツ」は余分な水分を逃がしつつ、もっちりした食感に必要な水分をキープするため、フィルムと紙を併用する。
店頭には、温度・湿度を一定に保つ専用什器を置く。横幅500mmのレギュラーサイズは最大72個の陳列が可能。スペースに余裕がない店舗のために、横幅350mmで56個陳列できる什器も用意する。事前の調査で、約9割の店にいずれかの什器を導入できることが分かっている。残り一割の店はレイアウトを変更して対応する。
耐油性素材を使った持ち帰り用の包材を数種類用意する
ドーナツの生地は味の素ベーカリー、油はJ-オイルミルズ、油脂は不二製油とカネカ、酵素技術は味の素、専用什器は富士電機と、分野ごとに協力企業を選定し、チームマーチャンダイジングで開発に取り組んだ。
セブン‐イレブン・ジャパンの鎌田靖取締役常務執行役員商品本部長は「我々がめざす商品を作るために必要な知見・技術を持っている企業に声を掛けさせてもらった」と説明している。
「ドーナツの開発には1年以上掛かった。生産自体はそれほど難しくなかったが、水分や温度に敏感な商材のため、温度管理や販売方法に時間を割いた。個包装で販売するよりも、裸のまま什器に入れて販売する方が支持を得られている。店内調理も考えたが、人手不足を考慮し、工場で完成させる。店舗は接客に専念してもらう」(鎌田商品本部長)と語っている。
配送は1日2便。配送時の包装を開封後、12時間で売り切る。買物客の持ち帰り用に耐油性素材を使った包材を用意する。1個用から7〜8個用の専用BOXまで数種類ある。
セブン‐イレブン・ジャパンの推定では、ドーナツ市場は約1300億円あり、そのうち大手チェーン1社が約1030億円とほぼ独占状態にあるが、10月下旬から先行発売した地域での実績から「潜在ニーズがある」(同社)と手応えをつかんだ。
専用工場への設備導入に合わせて順次販売エリアを拡大し、来年夏までには全国約1万7000店に導入する。16年度には600億円(6億個)の売上げをめざし、コーヒーの販売も伸ばす考え。16年度の「セブンカフェ」の販売目標は公表していないが、14年度は650億円の達成を確実視している。
ドーナツは1個税込100〜130円程度。店頭販売は6アイテムに絞り、地域性や季節性に合わせて商品を改廃する。
最初にドーナツを導入した23店舗の実績を見ると、既存の菓子パンの売上げが落ちることなく、1店当たり1日平均1万8000円の売上げがプラスオンした。同時に「セブンカフェ」の販売数量も約20杯伸びた。複数個購入するまとめ買い比率が51%と高かったのは想定外だったという。