〈年頭所感〉
持続可能な社会の実現に向けて
日本ロジスティクスシステム協会 大橋徹二会長

     大橋会長

 我々は国連が2030年をゴールと定めたSDGsに象徴される持続可能な社会を実現することを求められており、産業界においても企業価値を判断する指標として、これまでの財務的な指標とともに、非財務的な指標が重視されるようになってきた。

 このような環境変化に加えて、これまで当協会が、「ロジスティクスコンセプト 2030」や昨年設立30周年に掲げた「メタ・ロジスティクス」において、企業価値の向上と社会課題の解決を目標とするロジスティクスの重要性を、産業構造の変容と企業連携の見地から重ねて言及してきたことを踏まえて、2023年度の活動方針として次の3つを掲げる。

 (1)2024年問題への対応と持続可能な社会の実現
 (2)人的資本経営の実現と企業価値向上
 (3)LX(ロジスティクストランスフォーメーション)のための企業連携の拡充

 (1)2024年問題への対応と持続可能な社会の実現
喫緊の課題である「2024年問題」においては、トラックドライバーに代表される物流業界の持続性を考慮し、労働時間のみならず賃金も含めた労働環境の改善が、我々物流・ロジスティクスの関係者にとっての重要な課題となっている。併せて2050年のカーボンニュートラルの実現やフードロスの削減等、SDGsの目標達成を意識した活動を我々が率先して展開することも重要である。

 こうした状況の中で当協会では、「2024年問題」に対して、展示会、講演会をはじめ、あらゆる機会を通じて、その解決のための活動を行うとともに、関連団体や行政機関とも連携しながら、物流の重要性について、普及活動を行っていく。同時に物流、ロジスティクス分野におけるSDGsの現状や課題、取組事例の収集や普及啓発を行うことで、SDGsに取り組む企業を増やしていきたいと考えている。

 (2)人的資本経営の実現と企業価値向上
 ロジスティクスが「経営的課題を解決する非常に強力な手段」として認識され、経営戦略の一つとしての地位を確立するためには、財務面からその有効性を示すことが重要である。また、ESG経営の広がりとともに企業の非財務情報の一つである人的資本が注目されるようになっており、企業は「人的資本の価値を高める戦略」と「人的資本の情報開示」を循環させることにより、経営目標を達成する「人的資本経営」の実践が求められている。

 当協会では、今年度ロジスティクスと経営指標の相関に関する調査を行い、現在その結果をもとに経営戦略としてのロジスティクスの重要性を分析している。結果がまとまり次第普及していく。また、各種講座やセミナー等の人材育成事業で培った経験を活かし、産業界の「人的資本経営」への対応を支援していく。

 (3)LX(ロジスティクストランスフォーメーション)のための企業連携の拡充
 政府のフィジカルインターネット実現会議においては、2040年をフィジカルインターネットが社会実装される目標年としている。このような新しい仕組みを活用しつつ、物流、ロジスティクスを産業競争力の源泉とし、「成長産業としての物流」を実現することが重要である。そのためには物流、ロジスティクス、サプライチェーンを可視化するとともに、データドリブンなロジスティクスの構築が必須であり、業務プロセスなどの標準化を含む広義の標準化が欠かせない。

 当協会では、連携・共創の場である「オープンイノベーションラボ」の活動をさらに拡充し、高い視座で課題を認識・共有し、共に考えることで解決の糸口を導き出す交流の輪を広げていく。また、サプライチェーン、ロジスティクス、物流の各領域における課題に対応するため、SCM ACADEMY of JAPAN(SCM−AJ)や物流現場改善推進のための取組みに注力していく。

 物流、ロジスティクス関係者が一堂に会する展示会「国際物流総合展2023 INNOVATION EXPO」を2023年9月に、課題の解決策を提案し、議論を深める場「ロジスティクスソリューションフェア2024」を2024年2月に、それぞれ東京ビッグサイトで開催する。

 今年も当協会は、わが国産業活動と国民生活の持続可能な発展に向け、経済産業省、国土交通省等、関係各省庁の施策と歩調をあわせるとともに、産・学との連携を強化し、全力をあげて課題に取り組んでいく。