アンモニア冷凍ユニット「NewTonR‐3000」を開発、来年1月発売へ

 前川製作所は冷凍ユニット「NewTon3000」(ニュートン3000)の進化型となる「NewTonR‐3000」(ニュートン・アール3000、以下「R」と表記)を新たに開発した。既存の「NewTon3000」はアンモニア冷媒専用設計の単機2段スクリュー冷凍機を採用することで、それまでのフロン用冷凍機を流用した方式に比べ20%以上の省エネを実現しているが、新型の「R」は部品などほぼ全てを見直すことで、別機種と言っていいほどの大幅なグレードアップを実現した。コスト面でも高度なバランスに仕上げている。
 7〜8月に守谷工場で確認テストを行い、来年1月から本格発売を開始する。当初は冷蔵倉庫向けのタイプを発売し、冷凍食品などに使うフリーザー向けも順次発売する予定。

「NewTonR‐3000」

 「NewTon3000」に比べ「R」は様々な改良を加えて完成度を高めている。
 熱交換器の凝縮器、蒸発器は「シェル&チューブ」型から「シェル&プレート」型に変更した。油冷却器も「シェル&チューブ」型を「プレージング式プレート」型に変更した。
 シェル&チューブ型熱交換器(多管式熱交換器)はシェル(胴体)の中に多数のチューブ(伝熱管)を収めたタイプ。溶接技術があれば比較的簡単に作ることができる。

 新たに採用した「シェル&プレート」は伝熱管ではなく、凹凸パターンのあるプレート(板)を重ね合わせて冷媒の流路を作る。表面積が多くとれ、小型化、軽量化に効果を発揮するほか、小さな温度差でも熱交換でき、熱交換率も優れている。高い加工技術が必要なため、前川製作所は守谷工場に専用のラインを作った。
 熱交換器の変更により、「R」は20%小型化し、重量は3.3tと13%の軽量化に成功した。最も大きなポイントはアンモニアの使用量が従来の100kgから35kgと、約3分の1に減ったこと。これは保守の面でも優位性を発揮する。

 高段機の変更や液過冷却却器をプレート式からフラッシュタンク式に変更したことも性能向上に一役買っている。冷凍能力は5%高まり、COP(成績係数)は7%高まった。気温が低い時はできるだけ高圧側の凝縮温度を下げたほうが効率がよく、冬季の省エネに大きく寄与する。
 密閉度も高めた。アンモニアの漏洩リスクをさらに小さなものにしている。各所にある継ぎ手は減らした。バルブは漏れがないベローズ弁タイプに変更、増し締めなどによリ劣化しない特殊なパッキンに変更した。
 遠隔監視による運転状態のモニタリングはこれまでも行なってきたが、今回、さらに進化させたのが、いわゆる「故障の予知」の部分。トラブルに迅速に対応するレベルを乗り越え、トラブルを未然に防ぐ領域にまで発展させた。人間で言えば予防医学の考え方に近い。

 さらに、「本当に必要な時にオーバーホールする」ことができるようになる。これまでは4万運転時間ごとにオーバーホールをしていた。
 その仕組みを担うのが新たに開発した診断ソフト。
 従来の遠隔監視システムを担うPCASサーバに診断サーバを結びつけ、診断ソフトを導入した。診断サーバには15分ごとに情報が送られてくる。PCAS以外の情報(油分分析結果、振動データ、定期点検結果)もインプットし、ユーザーごとのトレンドデーターや加熱度・振動値、アンモニアの状況といったパラメーターの変化を即時に分析し、設計条件との差異などの絶対評価をはじきだす。問題があれば現地調査が必要な時期をメールで知らせる。
 診断ソフトを組み込んだ遠方監視システムはすでに試験運用を開始しており、新型の「R」発売とほぼ同時期にスタートすることになりそう。あわせて、「機能保証付きフルメンテナンス」のサービスも実施する予定。

 機能保証付きフルメンテナンスの詳細はまだ煮つめている段階だが、月々数万円の負担で万が一の故障・事故を防ぐことができるようになるという。これは、部品から自社生産しているマエカワだからこそできること。保管商品の保険という意味ではなく、あくまでも装置の機能保全を保証する形になりそう。

近々、診断サーバを加え故障の予知も行なえるようになる

フードエンジニアリングタイムス 2011年7月6日号