食品製造の労災防止にVRがひと役買う、事故を疑似体感

 ICT(情報通信)システム開発事業などを手がけるNTTテクノクロスはバーチャル空間で安全教育が行えるVR(仮想現実)サービスに新たに食品製造業向けのコンテンツを加え、このほど提供を開始した。食品製造現場で特に多い転倒事故や食品機械への巻き込まれ事故などを従業員に疑似体感させることで、安全に対する意識を高める。コンテンツは食品メーカーが監修した。

 NTTテクノクロスが開発したVRサービスは「NTT XR安全教育 powered by VR安全意識向上サービス」。NTTグループ各社から収集した工事作業の重大事故に関する知見に基づいた内容で、2019年からサブスクリプション型で企業に提供している。

 サービスメニューは「危険体感コンテンツ」と「危険予知コンテンツ」の2種類ある。

 「危険体感コンテンツ」は事故を疑似体感し、事故の原因となった作業手順の誤りと事故を防ぐ正しい手順を学ぶ。「危険予知コンテンツ」は作業現場に潜む危険要因と、それによって引き起こされる事故や問題を洗い出し対策を考える。いわゆる危険予知訓練をバーチャル空間で行う。

 今回の食品製造業向けコンテンツでは、床が滑りやすい現場での転倒や機械への巻き込まれが体感できる。シナリオは食品メーカー監修のもと実際の事故事例に基づいて作成した。「レビューによるフィードバックの反映を繰り返すことで、事故に限りなく近い場面を想定した内容になっている」(NTTテクノクロス)という。

 厚生労働省の労働災害統計によると、2021年度の死傷災害発生件数のうち製造業は3割で、中でも食品製造業が8890件と最多を占める。このうち転倒事故が2418件(27.2%)、はさまれ・巻き込まれ事故が1548件(17.4%)といずれも多い。

    コンテンツ画面のイメージ、食品機械への巻き込まれ事故を体感できる