弁当盛り付けや海苔巻き製造などの協働ロボットを開発するアールティ(東京都千代田区、中川友紀子社長)は、日本惣菜協会と経済産業省が進めてきた惣菜盛り付けロボットの研究開発プロジェクトに参画し、このほど人型協働ロボット「Foodly(フードリー)」の実運用を惣菜・調味料メーカー3社で開始した。
経産省はロボットの現場実装にはロボットを製造環境や食品仕様、周辺機器に合わせるのではなく、ロボットが働きやすい環境を作り上げる「ロボットフレンドリーな環境構築」が必要との考えを示している。今回の導入事例はまさに「ロボフレ」に即した成功モデルと言える。
弁当・惣菜メーカーのヒライ(熊本市)と藤本食品(和歌山県岩出市)は自社工場の盛り付けラインに「Foodly」を昨年2台ずつ試験導入し、テスト稼働を繰り返してきた。
ヒライではから揚げ(奥)とちくわサラダ(手前)の盛り付けを行っている、ちくわサラダ
はロボットがつみやすいように形状を変更した
ヒライでは盛り付け作業がしやすい容器や調理方法、オペレーション、工場内の機材配置など最適な方法を広く検証した。さらに、従業員がロボットと一緒に働くときの目線に合わせて、工場内の動線を見直した。
「ロボフレ」を前提にした製造ノウハウは着実に積み上がった。熊本名物「ちくわサラダ」の形状をロボットがつかみやすいように変更したり、調理方法を一部変えたりした。ロボットのために工夫を凝らした弁当は「ロボフレ弁当」と名付けてまもなく販売を開始する。
ロボットフレンドリーな環境で製造した弁当を「ロボフレ弁当」として販売する
鍋の素「赤から」ブランドで知られるイチビキ(愛知県名古屋市)は第2工場(同県東海市)で製造するレトルト惣菜「赤から具だくさんのつくねと白菜のスープ」の加工ラインに「Foodly」2台を昨年導入した。つくね具材をトングでつかみ、筒状のカップに入れる作業を行っている。
導入に際してはアールティが専用トングを開発したほか、「Foodly」の標準構成モデルを作業内容に合わせて変更した。「Foodly」はバラ積みの食材をAIビジョンで1つひとつ認識してピッキングできることが最大の特長だが、これまでは弁当容器が主な対象だった。今回は深さのある筒状容器に具材を投入するため、カメラの認識設定や投入位置の調整などを行った。
イチビキではつくねの投入作業を行っている、「Foodly」は手押し台車で簡単に移動できる
ため製造ラインの変更や段取り替えに対応しやすい
一方、イチビキは協働ロボットをインラインで導入するのは初めてのため、ハード・ソフトの両面で職場環境の整備を進めた。ハード面では「Foodly」が具材をつかみやすいようにラインを一部改良した。
ソフト面では従業員がロボットと協働することを受け入れる風土を醸成し、一緒に働く環境づくりに取り組んだ。たとえば、「Foodly」が水に濡れるのを防ぐため、水を使った清掃作業は時間帯をずらして行うなど、工場挙げてロボットに対する配慮を行き届かせた。
「Foodlyの設置当初は多くの戸惑いがあった」(同社)というが、「協働に向けてハード・ソフト両面から理解を深めることができた点は今後につながる」としている。