食品残さを養豚飼料に再資源化し、工場の廃棄物処理費の低減につなげる動きが明るい話題となるか。各社とも企業の枠を超え、手を結び、コスト削減と環境負荷低減に向けて力を注いでいる。守りの姿勢では置いていかれる。各社の攻めの姿勢に注目したい。
幸田商店が導入した残さ処理装置
茨城県の企業や団体、農家が食品リサイクルに向け盛り上がりを見せている。県特産の干しいもの残さを活用したエコフィードを推進、国産飼料を増産するとともに輸入濃厚飼料の原料に代替するものとして取り組んでいる。
干しいも循環資源の豚飼料化事業を支援する「茨城エコフィード協議会」が08年8月に発足。排出側となる、ひたちなか地区の 干しいも生産者や利活用するスーパーマーケット、技術的な検証と試験する大学や研究機関、エコフィード事業の実施団体である畜産事業者が協働で事業を推進している。農水省や茨城県、県畜産協会などの行政組織が活動への助言や提言、会議などの場を提供し、補助金などの窓口となる。
さらに、この活動を受け、翌年には「いばらき地域グリーンプロジェクト」を立ち上げた。「技術実証」の協議会として位置づけ、茨城地域に潜在する食品資源の有効活用を推進している。
干しいもを生産する幸田商店(ひたちなか市)やじゃがいも菓子「じゃがりこ」などを生産するカルビーの下妻工場が参加し、畜産事業者や研究機関などと連携している。
カルビーの下妻工場が導入した飼料化装置
いもの残さを利用した飼料はでんぷんが多く、脂質が少ない。これを活かして特徴のある豚肉を生産することができるという。また、脂質の多い食品残さを多用できるとも見込んでいる。発酵リキッドフィーディングへの技術的な要素や、クラスターの形成、コストの削減など効率化と省力化の課題に取り組んでおり、今後は規格外やその他の資源の利用も検討している。
カルビーの下妻工場が導入した飼料化装置の処理能力は1時間あたり最大500kg。じゃがいもの皮や選別工程で廃棄にまわるじゃがいもなどを破砕。酵素と腐らせないための安定剤を投入して、熱を加えながら撹拌する。出来上がった飼料原料を養豚牧場に運び、現地で配合飼料を混ぜ、豚の餌となる。飼料に再資源化することで、工場の廃棄物処理費が3分の1以下になるという。
モンテールのつくば工場が原材料の選定に加えて、特に重要視しているのが出荷しきれなかった製品の後処理。欠品させないためにも予備を作るのは避けられないが、その際、出荷できなかったものが出てしまう。このような生ゴミも飼料化するなど、リサイクルに努めている。
油脂分の多い生ゴミは埼玉県内の製パン工場から出るパンの耳と合わせることでA級の再生飼料になることが、国立畜産研究所の調査で分かった。再生飼料を使うことにより、豚の背油の割合に影響を与えているという。
従来は生ごみを堆肥していたが、この飼料化により産廃として処分しているクリーム類の堆肥化が可能になった。クリームは油脂分が多く、団子状になるため堆肥化には苦労があった。現状では再生不能と思われるゴミは高熱焼却炉で処理するが、飼料化、堆肥化、廃プラスチックのリサイクルにより、産廃費用はピーク年に比べて約70%削減している。以前は2台あった焼却炉を1台減らすことに成功した。
ユニー、飼料製造・畜産事業者のブライトピッグ千葉、プリマハム、山崎製パンは店舗から排出する食品残さを原料にした飼料で豚を飼育し、その豚肉を使って惣菜パンを作り、店舗で販売する食品リサイクルループを立ち上げた。
リサイクル惣菜パンは昨年10月の「3R推進月間」、また名古屋市で開催した「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」を記念したもの。
ユニーの排出した食品残さをブライトピッグ千葉が再生資源として引き取り、液状飼料を製造する。この飼料を豚の飼育に使用し、プリマハムがその豚肉を加工、肉惣菜を製造する。山崎製パンはその肉惣菜を使って惣菜パンを製造し、ユニー関東営業部のアピタとピアゴ31店舗で98円(税込)で販売した。
食品残さを「出す」こととなる食品メーカーにとっても、それを「使う」養豚業者にとっても歓迎される飼料化だが、それがうまく働くのには「新しい仕組み」の構築が必要だという。
近年、輸入飼料が高くなっており、中小規模の養豚業者では餌代の確保に苦汁をなめる日々が続いている。そこで食品残さを活かした良質の国産飼料が増産できれば、輸入飼料に頼らなくて済む。
「食品残さを飼料化する技術はできている。それをプロジェクトとしてどう起動させるかがカギ。下妻工場が参加した茨城県は産官学のスクラムがしっかりしている」(カルビー生産本部環境対策部)と指摘。他の自治体はこうした産官学の協働はまだ成熟していない。
食品リサイクルの成功事例がよい手本として知れ渡れば、全国でもリサイクル活動が盛り上がるだろう。食品企業や農家、畜産農家、研究機関、行政が強固なスクラムを組み、長期的な視野での経営安定化と、穀類価格や貿易交渉に影響されない飼料基盤の構築に関係者の期待が高まっている。