食品工場、都市ガスに転換で環境配慮

 食品工場でボイラ燃料として使っている液体燃料(重油、灯油)を都市ガスに切り替える動きが起きている。震災以降の原子力発電所停止に伴う火力発電への依存が高まり、CO2排出量の削減が危急の課題となっている。
 主要国の産業部門の最終エネルギー消費を見ると、日本では石油や石炭の割合が大きく、天然ガスの割合は欧米と比較して極めて小さいため、天然ガス利用によるCO2削減が期待されている。
 これに対し、食品業界は他の産業に比べてエネルギー消費に占める天然ガスの割合が比較的大きい分野。これは、早い段階から天然ガスへの燃料転換などによりCO2削減を掲げてきた姿勢が功を奏した結果であり、他の産業を先導している。現在、産業界は震災によるエネルギー源の問題も重なり、その確保と運用をもう一度見直す時期に直面している。
 ニチレイフーズは長崎工場(長崎県大村市)で20日から都市ガスでボイラを稼働開始した。船橋工場(千葉県船橋市)でも来年1月から都市ガスに切り替える。この施策により、CO2排出量を年間2108tと大幅に削減できると見込み、自営9工場の削減目標である年間641t(2009年度排出量の1%)の約3倍を削減することが可能になるという。 
 同社は自営9工場のうち、関西工場はすでに2003年からボイラの燃料を灯油から都市ガスに切り替え、年間約1470tのCO2排出量削減を実現している。
 ハナマルキでも伊那工場(長野県伊那市)に液化天然ガス(LNG)サテライト設備とガス炊きボイラを今月導入、運用を開始する。これまでのA重油から環境負荷の少ない燃料であるLNGエネルギーに転換し、年間710t(約30%)のCO2排出量削減と0.5%を超える省エネルギーを達成すると見込んでいる。

ハナマルキ伊那工場の液化天然ガスサテライト設備

ヨコオデイリーフーズが更新した高効率ボイラ

 都市ガスに転換するには、それに見合う高効率のボイラを導入する必要がある。当然、それだけの投資額が必要になる。そこで、老朽化したボイラを更新する際に、エネルギー源を都市ガスに転換してしまおうと考えるメーカーもある。ここで効果を発揮するのが「国内クレジット制度」の活用だ。
 群馬県でこんにゃく製品を製造するヨコオデイリーフーズは施設内で使用するボイラの燃料をA重油から都市ガスに転換した。性能に違いがあった個々のボイラを、3台すべて高効率都市ガスボイラに切り換え、CO2の排出を大幅に削減している。ボイラの燃料転換の効果を適切に評価し、一般的で信頼性の高い評価方法を得るため、国内クレジット制度へ参加、8.1カ月分で181t−CO2の国内クレジット認証を受けた。
 国内クレジット制度とは、大企業などによる技術や資金などの提供を通じて、中小企業などが行なった温室効果ガス排出削減量を認証し、自主行動計画や試行排出量取り引きスキームの目標達成のために活用できる制度。中小企業がCO2の排出量を削減できた場合、大企業は買い取って自社の削減分にできる。京都議定書目標達成計画で規定されている。2008年10月に政府全体の取り組みとして開始した。
 この制度を知り「CO2削減ができているという事実を得ることができる。第3者に認められる」(同社)と前向きに検討していたところ、群馬銀行からの呼びかけもあり、参加に踏み切ったという。
 中小企業によるCO2排出削減の取り組みを支援するため、大企業が削減分を買い取るというこの制度。群馬県では初の事例で、食品工場が関わっているのは全国でもまだ珍しい。同社の事例はその先駆けである。