スイスに本社を置くプラスチック配管メーカーのジョージフィッシャー(本社=大阪市浪速区)は、食品工場用クーリング設備向けの2次冷却用配管システムを提案している。一般的な鉄や塩ビ樹脂の代わりに「ABS樹脂」を配管に使用している。金属配管と異なり、数年で内部が錆びたり腐食しない。また塩ビと違い−40℃の冷媒を流しても破損することがない。
錆びや低温に強い「ABS樹脂」を使用した2次冷却用
配管「クールフィットABS」
同社が提案している冷媒用配管「クールフィットABS」はこれまでの金属配管の代わりに、低温性と耐衝撃性に優れたABS樹脂パイプを利用することで、ブライン液を使用しても錆びの発生がなく長期使用できる。例えば、アイスクリーム工場では、バーアイス製造に使用するブライン液が塩化カルシウムであるため、ブライン層を持つバーマシンと、ブライン液を冷却する工場外部のコンプレッサーが錆びてしまい、一定期間が経つと交換が必要だった。
ABS樹脂は軽量で、施工時に溶接熟練作業員が不要で人手も省力化でき、施工時間も大幅に短縮できる。接合も専用の接着剤を使うので、閑散期に食品工場の作業者が対応することも可能。外装に発泡ウレタンを使用したプレハブ断熱タイプを使っており、断熱工事を削減できるので、トータルコストの低減にも寄与する。
米国のウォルマートが採用、日本でも冷蔵倉庫や
食品工場が採用する動きに向かっている
クーリング設備には冷媒を直接循環させる直接冷却システムと熱交換器を挟んで異なる冷媒を循環させる2次冷却システムがある。食品工場では正確な温度管理ができる2次冷却システムが増えている。
2次冷却システムでは2次側冷媒の省フロン化の動きが盛んになっている。地球温暖化に大きな影響を及ぼすフロンガスの大気への拡散を削減するため、2次冷却システムは漏洩リスクの少ない機械室などの限定空間の1次側のみフロンガスを使い、漏洩リスクの大きい冷蔵・冷却周りは2次側冷媒のノンフロン化とする仕組み。欧米ではすでに主流になっている。
米国最大のスーパーマーケットチェーン「ウォルマート」がクーリング設備に採用しているほか、魚市場のアイススラリーなど数多くの実績を重ねている。
日本でも冷蔵倉庫や食品工場が積極的に採用する動きに向かっている。
大震災の影響で塩ビが品薄となり資材不足が深刻となっているが、ABS樹脂は国外で生産しているため、資材不足を回避している。「震災によりABS樹脂が損傷を受けたという報告は今のところ受けていない。鉄や塩ビに変わる資材として成果を上げている」(同社)という。
先行導入した工場で、その耐久性・作業性は証明されており、錆びの発生のない新たな配管システムとして、今後一層業界から注目を集めそうだ。