加工場で商品の最終仕上げ、ニーズ高まる
辻野 船橋物流センター

低温物流は「安定的な収益基盤を維持」

竣工当初から併設している加工場の役割が近年増して
いる船橋物流センター

 全国5カ所に物流センターを有する辻野(千葉県銚子市)。船橋物流センターは豊海物流センターに次いで2番目に歴史のある拠点であり、都心へのアクセスが良い船橋冷蔵倉庫団地内という地の利を活かし、外部からの商品の集荷、保管、流通加工、配送代行が主な柱である。収容能力は1万7000tとグループで最大規模。同社の基幹拠点の1つとして成長を続けてきた。
 同社は水産事業、貿易事業、食品事業、そして低温物流事業と幅広く展開。グループの総力を挙げ、水産原料の買付〜製造〜販売〜保管・配送の一貫体制で、安全安心な食材の提供に専念してきた。「その一翼を担う低温物流事業は “どう利益を上げるか”と現場の改善改革に対して意識の高いスタッフが多い。その素地を育んでいるのが、全物流センターが認証を取得したISO9001の“停滞は衰退”との理念が反映されている」と小沼透所長。小沼所長は平成元年の入社以来、27年。一貫して同社で物流畑を歩いてきた人物である。
 5カ所ある物流センター(豊海、船橋、桔梗野、仙台、福岡)のうち、4拠点を経験。「これだけの拠点を歩いてきたのは社内でも貴重な存在ですね」と笑みを浮かべる。船橋に赴任したのは今回で3回目。他拠点との違いや立ち位置など充分に理解している。愛着もある。
 「豊海、船橋、仙台は他社製品の保管、配送がメイン。豊海は場所がら水産品が多く、船橋は業務用冷凍食品の取り扱いがほとんど」。また、「船橋は竣工当初から加工場が併設されているのが強みであり、セールスポイント。私としては非常に仕事がしやすい拠点です」という。そう語るのは、この加工機能が後々、船橋物流センターでスタートさせた新事業につながる“カギ”となっているためだった。

通販の出荷もスタート

 業務用冷凍食品の取り扱いが多いのは稼働し始めた頃から変わらないが、近年では加工場を活かし、量販店向けのシール貼りなど商品の最終仕上げの仕事が増えている。以前からユーザーの要請はあったが、2、3年前から特に増えているという。通販向けの商品出荷も始めて間もない新事業だが、徐々に取扱量が拡大している。
 スタッフを増員して対応を進めているが、取り扱いがこれ以上伸びれば、それも厳しくなりそう。「どこの現場もそうでしょうが、募集をかけても集まりにくくなっています。人手不足は深刻な問題です」と小沼所長。機械の導入による自動化もすぐには難しく、スペース確保の問題とも重なり、「加工場の今後の対策が当センターの重要課題。ユーザーから寄せられている期待に何とか応えなければなりません」と語る。

センター同士で切磋琢磨

      小沼所長

 全国に5カ所、しかもそれぞれが特色あるセンターなのが同社の強み。各センターはそれぞれの特徴に合わせた営業戦略を掲げ、具体的な数値目標を達成するために日々業務に着手している。ときに競い、ときに良いところを参考にし、お互いを高め合っている。「低温物流事業は新規開拓・既存深耕・ローコストオペレーションが基本」と小沼所長が語るのは、そういった風土が根付いているからだろう。
 ローコストオペレーションの基本である改善改革を実行し、業績を向上させることが各センターに課せられている。また、営業力の強化だけでなく、中長期的な設備投資も怠らない。船橋物流センターではフロン対策のため、冷凍機12台を2年前に更新。省エネ対策のため、外壁や屋根など防熱関係に近いうちに投資したいとしている。
 今期も年末年始の繁忙期に突入している。前期は11月末に基幹システムを入れ替えた。同時に津波対策のため1階にあったシステムを2階にリプレイス。しかし、予期せぬ不具合が生じ、12月にも後を引いたため繁忙期を直撃し、苦い経験をした。
 「現場スタッフには大変な苦労をかけました。その負担を少しでも軽減しようと、私も伝票出しを担当、現場にいる日々が続きました」と振り返る。「その経験を忘れず、今期は万全の体制で臨みたい」と気を引き締めている。