予防保全こそ我が社の使命
平井カンパニー 代表取締役社長 平井智樹氏

 平井カンパニーは自社独自のメンテナンス管理システムを専門会社と共同で開発し、導入した。このシステムの導入により社内の業務改善成果をあげ、予防保全の精度を高めるなど、顧客サービスの向上に結び付けている。平井智樹氏にシステム開発のねらい、今後の展望などを聞いた。

      平井社長

 ――管理部門で取り組んだことは?
 平井 管理部門在職中に見直したのは、売掛管理、在庫管理、受注管理の仕組みでした。なるべくPC化して人が行っていた煩雑な作業をなくしていきました。
 自社倉庫で在庫したり、メーカー在庫を直送してもらう、など色々なパターンがあるので、機械や小さいベアリングなどの部品を在庫管理するのは大変でした。今まではメーカーに注文した部品がどこの顧客向けに注文したのかを結びつける手段がなかったのですが、紐付け管理ができるよう改めました。
 売掛管理では締日が近づいても売上げがあがっていなければ、営業でも管理部門でも、誰でもわかるように見える化する仕組みを取り入れました。スケジュールの可視化、稟議申請なども組み込み、メール化、PC化を進めました。運用から2年たち、業務がスムーズに運ぶようになりました。

 ――やり方を変えることに社内の抵抗はなかった?
 平井 最初は全員に徹底できなかったものの、今は皆が便利な仕組みだと認識してくれたと思います。スケジュール管理を始めて良かったことは、各人の空き日などが一見してわかるので、出張や顧客訪問の日程調整が楽になりました。また、営業活動が営業所を超えて皆にわかるようになり、社員間でのアドバイスができるようになりました。経験の浅い社員が営業に行く時には、技術部門の上司などがアドバイスできる、など社員交流が増えました。
 営業所は静岡、仙台、札幌など、互いに距離が離れているので、今までは各拠点が何をやっているのかよくわからなかった。この仕組みを取り入れたことで、社員間、拠点間の距離が近くなり、より助け合いながら仕事を進めていけるようになりました。

 ――メンテナンスにもシステムを導入したというが。
 平井 メンテナンス専門の子会社シー・エス・カンパニーでは、関東の顧客向けに定期点検サービスを行っています。年に2回、盆前と年末の繁忙期の前に、当社から顧客にお伺いして機械の点検や調整、部品交換など、関東のスーパー、店舗などで600〜700軒、食品工場で20軒くらい実施しています。
 その後、点検報告書を作成し顧客に提出します。メンテナンス担当が1日に何件も顧客を回り、帰ってきてから報告書を作成するのですが、3〜4時間かけて報告書を作成するため、毎日遅くまで残業をしていました。このデスクワークを削減したいと思ったことが導入検討のスタート。「現場でスマホ片手にチェックし、必要なら写真を撮って、登録したらあとは報告書を印刷するだけ」にならないかと。

 ――目的にかなったシステムはありましたか?
 平井 色々な会社を比較した結果、住友セメントシステム開発(スミテム)を選びました。決め手となったのは、同社が当社の色々な要望を参考にして、これから一緒に設備管理システムを作りましょうという柔軟性を持っている事に魅力を感じたのです。他の会社は既にパッケージングされていて、既成のシステムは当社が求めている機能がない、などの問題がありました。同社のパッケージングが完成した状態だったら、このような展開にはならなかったと思います。運がよかった。

 ――用途は定期点検だけ?
 平井 色々と検討を進める中で定期点検のほかに、日常的な緊急修理の案件管理をこの仕組みに組み込みました。依頼が来る→いつ、誰が修理に行くか決める→修理完了→修理報告書作成、の一連の流れが管理できるようになりました。案件の進捗管理をすることで、ミスや抜けを減らすことができ、顧客サービスが向上するという非常に良い循環になりました。
 ――理想のシステムになったと。
 平井 まだ改良途上です。定期的にスミテムとミーティングをして、不具合を伝え、テストを繰り返している状態です。今は本社と関東地域でしか使用していませんが、完成度があがってきたら、全営業所に展開する予定です。

 ――営業面の戦力アップにもつながりそうだ。
 平井 この仕組みを入れたことで、当社の顧客ごと、店舗ごとにどのような機械が入っているかがわかり、各機械についての修理履歴を紐付けられるようになりました。機械ベースで情報を見れば、過去にどういった修理をしているかなどがデータから読み取れます。「この機械はこの部分の部品を半年に一度は換えている」、「年に一度はこの部分を修理している」などが見えるようになります。その情報を基に定期点検にフィードバックすれば、顧客に部品交換などのタイミングを提案できるようになると思っています。データを示しながら顧客に予防保全を提案できます。経験の浅いメンテナンススタッフのスキルを補う効果もあると思っています。

 ――今後の展望は?
 平井 当社は商社であり、機械を作っているわけではないので、機械を販売する時に当社を経由する+αを絶対に作らなければならないと思っています。 
 1つはプロセスセンターエンジニアリング。顧客のスーパーが生産体制の抜本的見直しをめざしてプロセスセンター化を進める時に、レイアウトを作成して図面を提案したり、生産性を計算してシミュレーションするなど、機械を導入する前のサービス提供に力を入れます。
 また、機械を導入した後のサービスを今よりも向上させたいと思っています。既にシー・エス・カンパニーというメンテナンス専門のチームを作って、急に機械が故障してもすぐに対応できる仕組みを作りました。ここに予防保全の仕組みを取り入れて、さらに高度なサービスを提供していきたい。当社から仕入れれば、アフターサービスもバッチリ、人もすぐ来てくれるし、過去の修理履歴も管理してくれる、「平井に任せておけば安心」というところまで顧客から信頼を得られれば良いと思っています。