「あけぼのさけ」、100年愛され続ける理由は
マルハニチロ北日本（下）
世にロングセラー商品は数多く存在するものの、食品業界で100年以上続いた商品となると、そうざらにはない。
1910年の703ケースから始まり、２年前までの100年間に国内外で約39億缶が食された百年ブランド「あけぼのさけ」。その生産拠点となるのが現在のマルハニチロ北日本（マルハニチロ食品の子会社）釧路工場である。
かつては母船式さけ工船で生産
道東の新鮮なサケのみを使用
かつては北洋ベーリング海の母船式さけ缶工船で生産した。
1952（昭和27）年、戦後の北洋漁業が再開されると、日魯漁業釧路罐詰工場（現在のマルハニチロ北日本釧路工場）は４〜12月の期間限定で操業を開始。1964年に日魯漁業函館支社釧路事業所罐詰工場として工場移管を受け、北洋母船で冷凍したカラフトマスを原料にさけ缶の製造を開始。母船式さけ缶工船の機械類を北海道各地の工場に配置し、洋上缶詰生産から徐々に陸上へ生産拠点を移行した。
缶詰製造は、期間限定の生産だったため、釧路港や北海道道東沿岸の豊富な定置物アキアジマなどを使い、様々な水産加工品を生産してきた。
1967年に釧路事業所缶詰工場が通年操業を開始。根室事業所花咲缶詰工場は閉鎖され、缶詰生産機械を釧路事業所に移管。1977年に日魯漁業釧路工場、1990年にニチロ釧路工場に名称変更。その後、ＩＳＯマネジメントシステムの認証はＩＳＯ9001（品質）、ＩＳＯ14001（環境）、ＩＳＯ22000（食品安全）を2007年までに全て取得。翌08年には労働安全衛生システムのＯＨＳＡＳ18001の認証も取得した。
同年、マルハニチロ食品に社名変更。第一工場にさんま蒲焼ラインを増設、焙焼機、自動充填機を導入するなどラインを充実させ、今日に至る。昨年４月、マルハニチログループの食品工場再編によって、マルハニチロ北日本に社名変更。同社釧路工場となった。
敷地面積は1万503�屐�建物面積5518�屐⊇抄醗�数165人、生産規模に比べて決して広いとは言えないが、「人も製品も移動させる必要が少ない分、合理的と受け止めている。ただ、生産数量を増やすには、ラインをこれ以上増やせないので、スピードを上げて、生産性を高めるしかない」と伊藤愼一工場長。
今も変わらぬ生産者の「十戒」
笑顔が待つ食卓へ
初期の生産にかかわった阿部三郎氏は「鮭鱒缶詰製造者十戒」を自らに課している。
「只優秀なる状態の新鮮盛期の鮭のみを使用せよ」
「鮭は丁寧に取扱えよ、その輝ける腹を痛ましく槍にて突き破る事勿れ、又その美しき肉を荒々しく打ち叩く事勿れ」
「新しき世の開缶者が汝の不注意を発見する事なきように、正しき肉詰をなす事に汝の全力を尽せ」（10項目のうち３つを抜粋）
「あけぼのさけ」誕生から100年。堤商会、日魯漁業、ニチロ、マルハニチロ食品と、時代の流れとともに会社名は変わったが、その品質第一の姿勢は全く変わっていない。
（シリーズ終わり）