おせち料理も無添加調理へ、全社挙げての「重詰め」
石井食品 八千代工場(2)

 石井食品は八千代工場で今シーズンのおせち料理の生産を11月から開始、今月ピークを迎えている。主力のハンバーグ・ミートボール同様、2012年からはおせち料理も、食品添加物を使わずに製造する無添加調理に変更した。おせちは1年間の生産活動の集大成。スタッフの思いも特別だ。

 北海道産の黒豆は水浸し工程で水から戻さずに熱湯に浸し、水煮後は蒸らした状態にする。従来2日間だった工程は3日間に延びたが、重曹や硫酸第一鉄(発色剤)を使わずに、黒豆本来の風味と自然な色を生かす黒豆ができた。
 国内で加工する栗きんとんは茨城、熊本、大分産の栗を使用。形状や色に厳しい基準を設けて選別している。従来は栗の色が鮮やかに見えるよう、クチナシ黄色素を使用していたが、現在では栗本来の色と風味をそのまま生かしている。今年は一貫ラインで生産するため、昨年までの工程を一部見直し、時間短縮につなげられるよう、新たな手法に挑戦している。
 栗きんとんはお重に盛り付けて提供するほか、単品で出荷することもある。その際、手作業で容器に充てんし、トンネル式フリーザーで10分ほど凍結。その後、八千代市内にある冷凍倉庫で保管し、12月15日以降解凍してから順次出荷する。

黒豆は温度管理が難しい。丸1日煮る。“豆と会話しながら”炊いていく

デリカ棟2階の昆布巻きの煮釜ライン。6釜ある

 おせち料理を生産するデリカ棟には、スタッフのユニフォームを色分けしていることに気が付く。緑は製造、青は充填、白は仕上げ、というように役割を分担してテキパキと働いている。昨年の経験者が新しく入った仲間に積極的に声をかけて引導しているのも、おせち料理のようなシーズンものの生産ならでは。経験豊富なスタッフが社員だけでは行き届かないところをカバーしている。

栗を選別

形状や色に厳しい基準を設けている

芋餡と合わせて栗きんとんに。手前のスタッフが容器に充填。その後、奥のスタッフがきれいに成形する

原材料品質保証書で信頼得る

 ハンバーグやミートボール同様、おせち料理にも原材料品質保証書を封入する。メニューごとに加工地、主原材料原産地、検査項目などが細かく記載している。
 「おしながきや原材料名などの内容がよくわかり、安心していただくことができた」、「全体的に素材を生かした必要最小限の味付けでとてもおいしかった」など昨シーズンの出来栄えに消費者から多くの賛同を得ることができた、という。

完成した栗きんとんと原材料品質保証書

重詰めに込めた“責任”、“やりがい”

  奥乃総括マネージャー

 生産は12月最終週がピーク。社員総出で対応し、本社(千葉県船橋市)勤務の社員も工場へ応援に出るという。
 そのピークの「最」渦中にあり、おせち料理の最後の締めくくりである「重詰め」は、ていねいにバランスよく詰められるようにスタッフ1人ずつが担当し、各人がそれぞれの素材を重詰めしていく。以前までのベルトコンベアによる分担作業に比べ、時間当たりの生産量は半分ほどになったが、その判断に迷いはなかったに違いない。
 「自分が盛り付けたお重に対する責任は、コンベア生産に比べて、比較にならないほど高いものが必要となります。その責任が成長となるでしょう。おせち料理は1年の始まりではあるが、私たち生産する側にとっては1年間の生産活動の集大成。1年間の成果を発揮できるよう、社員はもちろん、パートスタッフにもその責任を求めています。それが仕事のやりがいになるのだから」(奥乃匡執行役員・品質保障部総括マネージャー、検査センターマネージャー)という。(次号へ続く)

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2013年12月18日号掲載