刺身のつまを産業化、アイテム増える

 ナガタフーズ(茨城県笠間市)の六次産業化は「刺身のつま」から始まった。その加工技術を生かし、おろしダイコンを使ったドレッシングや、干しイモから派生したイモようかん、スイートポテトなど様々な商品開発を行なっている。

ナガタフーズの外観

 以前はさつまいも、かぼちゃ、ごぼうのほか、米も生産していたが、冬場は仕事がなくなるため、干しいもづくりを開始した。当時、永田良夫社長は市場に勤める兼業農家だったが、「刺身のつまを産業化できないか」と1992年に法人化し、ダイコンの加工を始めた。市場を離れるときの送別会に出てきた「刺身のつま」を見て、可能性に懸けてみた。16ヘクタールの畑でダイコンを栽培、現在は県内の契約農家のほか、岩手、青森、鹿児島からも産地リレーでダイコンを仕入れている。これにより、通年で刺身のつまを生産している。
 刺身のつまはダイコンの繊維がしっかりとし、パリッとする食感が欠かせない。年間約6000tを出荷している。
 ダイコン以外にも、刺身のつまに必要なニンジンや大葉、パセリ、小菊なども扱っている。刺身のつまは野菜というより魚と一緒に扱われるので、東京の大田市場のほか、築地、水戸、船橋、焼津など魚を扱う市場に出荷している。
 ダイコンを利用したものは刺身のつま以外に、粗挽きにした冷凍おろしダイコンを生産、ほぼ全量をキユーピーに納入している。
 おろしダイコンを使ったドレッシングも2008年から生産開始した。「大根百笑」という名前で和風味、おろし玉ねぎ味、中華風味、香味野菜のポン酢風味の4種類(380ml)を販売している。県内産のダイコンのみを使用していることをうたい、京成百貨店や茨城空港、笠間工芸の丘、みずほの村市場などで販売。年明けからは200mlタイプの販売も開始する。

 同社はダイコンとともに成長してきた。事業を開始した当初は収穫したダイコンを保管する大型冷蔵庫が1棟だったが、増築を重ね、今では5棟となった。それでも、「限界に達してきた」という。また、「電気代が一番心配」と懸念し、現行の冷蔵庫を省エネタイプに更新することを検討している。
 苦い経験もある。震災直後、3日間停電し、工場の配管が損壊したため1週間生産停止を余儀なくされた。自家発電設備をまだ備えていなかった。「何が起こるかわからない。夏場に電気が止まれば、ダイコンは使えなくなるだろう。それだけは避けたい」(同社)とし、冷蔵庫の屋根を有効活用するためにも、太陽光発電システムの導入も検討している。