従業員の腰痛予防対策を後押し
アシストスーツを導入しやすい低価格で提供

意匠にこだわった「サポートジャケットＢｂ＋ＰＲＯ�供廖�
背骨から骨盤にかけて装着した「第二の背骨（Ｂｂ＋）」
が負担の少ない姿勢角度を維持する

　アシストスーツを開発するユーピーアール（東京都千代田区、酒田義矢社長）は2016年の販売以来、累計１万5000着を売り上げる「サポートジャケットＢｂ＋」シリーズから作業性と快適性、デザイン性を大きく向上させた新モデル「Ｂｂ＋ＰＲＯ�供廚鬚海里曚蛭�売した。

　前傾や前かがみ、中腰、しゃがみ、起き上がりなど様々な作業姿勢による腰の負担を軽減し、労働環境の改善に貢献する。

　アシストスーツというとモーターや圧縮空気などを動力源にし、重量物を持ち上げる際に効果を発揮するというイメージが強い。だが、食品工場などの製造現場は自動化や省力化が進んでおり、活用領域が限られる。

　それよりも長時間立ったまま作業台に向かったり、あらゆる姿勢を繰り返すことで腰を痛めるリスクをいかに減らすかのほうが潜在需要は高い。腰痛はいまだに職業性疾病の６割を占めるとされ、企業の腰痛予防対策が進んでいないことは明らか。

　ユーピーアールはここにねらいを定め、近年は無動力型のアシストスーツの製品開発に注力する。長澤仁アシストスーツ事業部長は「立ち仕事が多い女性のパート従業員に動力タイプは必要ない。当社の無動力型は腰の負担を軽減するのに役に立つし、低価格で導入できる」と語る。

　実際、「サポートジャケットＢｂ＋」シリーズの無動力型は２〜３万円台に抑えることで導入ハードルを下げており、食品工場や物流施設、農場、介護施設、美容室、保育園、事務職など幅広い業種で採用されている。

　新製品の「Ｂｂ＋ＰＲＯ�供廚眄乎倭悩爐鯤儿垢靴燭蝓�部品改良を加えたりしたが、３万8000円（税別）に抑えた。「市場を活性化するため、利益率を下げてでも低価格で提供するというのが当社の考え」（長澤部長）。

前傾角度を抑え、正しい姿勢に導く

　「サポートジャケットＢｂ＋」シリーズは2016年から発売している。最大の特長は背骨から骨盤にかけて、もう１つの体幹を生み出す「第二の背骨（Ｂｂ＋）」理論を独自に構築したこと。ジャケットの背部に装着した部品は背骨の構造と同じアーチ状にし、適度な可動性を持たせた。これによって椎間板にかかる圧力を抑え、負担の少ない姿勢角度を維持することができる。

　腰を痛める主な要因は、頻繁な持ち上げや前かがみと言われている。新製品の「サポートジャケットＢｂ＋ＰＲＯ�供廚呂海瞭虻遒鮃圓�時の前傾角度を抑える作用を持つ。悪い姿勢を理想的な姿勢に導きながら腹筋や背筋などの筋肉を正常に機能させ、腰の負担を軽減する。

　同社の検証によれば、「ＰＲＯ�供廚鯀�着した時の前傾角度は約52度と未装着時に比べて９度以上減少する。これは腰椎椎間板にかかる瞬間的な負荷圧力を１回の持ち上げ作業につき10.6�坩幣紊盡困蕕晃�果に相当する。

長時間立ち続けるテーブル作業も腰痛を引き起こしやすい、アシストスーツが前傾角度を抑え
て正しい姿勢に導く（写真は弁当製造業）

　「ＰＲＯ�供廚呂海里曚�にも太ももの裏のマッスルベルトと膝ベルトのデザインを改良し、作業者の腰や膝にかかる負担をこれまで以上に軽減することに成功した。
　さらにマッスルベルトの接合部に足の動きに合わせて角度が変わるバックルを採用。これによってベルトの「よれ」を防止し、力が安定的にかかるようにした。

　バックルは取り外すことができ、業務の切替えに合わせてサポートジャケットの上半身と下半身を切り離すことを可能にした。

　たとえば、従来は物資の積み込みから運転へと着用者の動きが変わるたびにアシストスーツを着脱する必要があったが、切り離すことでこの問題を解消した。一連の作業をストレスフリーで行えるようしたことは画期的といえる。

アシストスーツ市場は成長期に向かう

　アシストスーツ市場の規模はどれぐらいか――。動力型に限るが、矢野経済研究所の調査では2020年度の市場規模は前年度比190.8％の37億円に拡大し、2022年度には71億円まで伸びると予想している。

　長澤部長は無動力型のアシストスーツ市場についても「理解度が高まり、市場が育っていく雰囲気を感じる」と語る。もともと腰痛を防ぎたいという潜在需要が高いマーケット。同社が業界を先導し、手の届きそうな価格帯に入ったことで導入が一気に広がる可能性はある。

　一方で各メーカーは機能性を競うが、長澤部長によれば「ユーザーはまだ機能性を求める段階にない」という。重い、暑い、きつい、格好悪いといったことを指摘するレベルにあるため、同社はそうしたユーザーの不満解消を見越したうえで開発を進めている。

　重要視するのは見た目。まずは着てみたいと思わせることが大切として、「ＰＲＯ�供廚魯好織ぅ螢奪轡紊雰曽�に仕上げ、生地やベルトは濃灰色を採用した。汚れが目立たず、見る人に違和感を覚えさせないぎりぎりのバランスを調整した。将来的にはカラーバリエーションも計画している。

　　重量物の持ち運びが多い現場でも腰の負担を軽減するアシストスーツのニーズは高い
　　（写真は米卸業）

　実際に着用すれば、効果も併せて実感してもらえるという考えのもと、各種展示会には積極的に出展する。そうした中で最近は腰痛に対する来場者の意識の変化を感じるという。

　「ドライブレコーダーがここ数年で広がったのは安全に対する意識が高まった結果。これと似たようなことがアシストスーツでも起きないとは限らない。

　会社側が近年、従業員の安全や健康を守ろうという姿勢を打ち出し始めている。頭にヘルメットをかぶるように、腰にも保護具を着用したほうがいいと提案すると、ユーザーに響くようになってきた。腰に保護具を付ける作業様式が常識になる可能性は十分ある」（長澤部長）。