食品工場に設備保全管理システムを提案
まずは紙帳票のデータ化を支援
建物・設備の施工管理やリフォーム工事を請け負うＢＰＭ��（東京都渋谷区、桐原康輔社長）は、設備機器のメンテナンスや保全業務に特化した自社開発のクラウド型管理システム「Ｑｏｓｍｏｓ（コスモス）」を食品工場向けに提案を強化している。業界別に活用法を紹介する特設ページ（https://lp.qosmos.biz/）に食品工場編をこのほど追加した。
欧米のメンテナンス業界で採用が広がる「ＣＭＭＳ」（設備保全管理システム）のクラウド版。ＣＭＭＳは設備の基本情報や稼働状況、点検修理の履歴などを一元管理するシステムで、取得したデータは修理・メンテナンスの外注書作成や見積依頼、工事計画、備品の調達・在庫管理、予防保全などに活用できる。
通常は大型のシステム導入が必要になるが、同社は「やさしいＤＸ（デジタルトランスフォーメーション）」をコンセプトに、現場での使いやすさを追求しており、スマホやタブレットがあれば簡単に導入できる。コストも大幅に抑えることができる。ＣＭＭＳのクラウドサービスは国内初となる。
クラウド型ＣＭＭＳの開発は国内初、将来はＡＩの実装化をめざす
昨年４月にリリースしたばかりだが、紙台帳やエクセルによる管理からデータ管理に移行したいというニーズの高まりを背景に受注を伸ばしている。すでに建設・不動産業界を中心に250社以上の導入実績を持つ。最近はテスト導入する食品メーカーも増えてきた。
坂本海取締役は「食品工場は様々な設備機器を保有しているが、日常点検や保守点検を紙ベースで行っている現場が多い。紙帳票のデジタル化を入口にして、保全管理業務のＤＸを支援したい」と語る。
新機能を搭載、履歴データを見える化
使い方は簡単。定型フォーマットに管理対象の設備リストや点検項目をあらかじめ登録しておけば、点検作業者は項目に従ってチェックしたり、数値を記入するなどしてアップロードするだけで作業は完了する。スマホで撮影した設備機器の写真も添付できる。専用アプリなどは必要ない。設備機器に貼り付けたＱＲコードを読み取れば定型フォーマットにすぐにアクセスできる。
アップロードした点検結果はリアルタイムでデータベースに蓄積され、一覧表示や写真報告書というかたちで自動作成する。一覧表示は設備や点検項目ごとに検索できるほか、異常値だけを検出することも可能。
さらに、履歴データをダッシュボード（可視化ツール）で一覧できる機能をこのほど新たに搭載した。設備機器の稼働状況やトラブル報告の推移をグラフやリストで示す。異常値の傾向やメンテナンスの状況を見える化することで、リプレイスを含めた設備投資の判断などに活かせる。
同社は機能拡充を順次進めており、将来的には蓄積したデータを活用して、ＡＩによる予知保全を実現したい考え。「点検作業の指示や見積り依頼、備品の発注など周辺作業も自動化できるようにしたい」（坂本取締役）。
点検作業者がアップロードした報告結果は管理者もリアルタイムで確認できる
ＨＡＣＣＰ対応や技術継承に活用も
テスト導入した食品工場の中にはＨＡＣＣＰ対応のために使っているところもある。加熱調理機器の温度管理や金属検査機の動作確認、日常清掃などの記録・管理をデジタルに切り替えた。
意外なところでは「原材料の仕込み」にも使用し、原材料の投入量や機械の稼働時間、作業場内の温度など、品質のカギを握る作業工程を細かくデータベース化しているケースもある。これまでは紙帳票で管理していたため、データとして活用することが難しかった。
坂本取締役は「ベテラン従業員の経験や知見を数値化してデータ化することで属人化を排し、技術の継承や品質の標準化が可能になる」と語り、設備保全以外のニーズにも柔軟に対応できることを強調する。
取得データをダッシュボードで一覧できる機能を搭載した、画面はイメージ