北米すり身、日米とも生産動向を静観
 年末の暖冬で練り製品の消化進まず、原料価格じっくり交渉

いよいよAシーズンの漁がスタート

 蒲鉾、ちくわなどの水産練り製品や冷凍調理食品に使われる北米産すり身の価格交渉が米国生産者と日本の需要筋間で進められる時期になったが、今年は例年以上に動きが静か。
 日本国内では年末年始まで続いた暖冬で、鍋物などに使われる水産練り製品の動きが鈍い。加えて11月末の国内のすり身の在庫は6万3291tで、前年同期に比べ7000t(12%)も多いため、日本の加工食品メーカーなど需要筋はあわてて調達する必要がない。
 春モノ(Aシーズン)の北米すり身価格が決まるのは例年よりずれ込みそうだ。水産タイムズ社が米国シアトルに記者を派遣し、現地関係者からの聞き取りと各種データなどから独自に動きをまとめた。
 アラスカ・ベーリング海の今春(Aシーズン)のスケソウダラ漁は1月20日解禁となった。今年のベーリング海のスケソウダラ漁獲枠は134万tで前年より2%強増えた。

 北米すり身の主力であるベーリング海のスケソウダラの漁獲枠は年間120〜130万tで安定している。しかも昨年の製品別生産量は「すり身」と「フィレ+ミンス」が半々となり、すり身の比率が久々に増えた。
 これは昨年Bシーズン、キングサーモンやチャム、いかなどと混獲しないように、大型魚のいる漁場を避けて操業したため、大型魚の割合が減り、小型魚が増えた。すり身の需要が堅調だったことや、小型魚の割合が増えたことで、生産効率の良いすり身の生産が増えた、と現地関係者は分析している。

フィレの市況不透明、ロシア産と競合で下振れの可能性も

 すり身価格に影響する北米産フィレの市況は不透明感が強い。中でも欧州向けフィレは「不安要素が多い」(現地すり身関係者)。
 北米産スケソウダラ・フィレの最大の輸入国であるドイツでは、大手ユーザー数社で席巻する市場で1社がこのほど経営破たんし、大きな影響が出ている。米国の生産者の一部では、これにより欧州向けフィレの在庫を抱えることになった、という。 
 ロシア産スケソウダラ製品との競合も激化している。
 ロシア産ドレス原料を使い、2回凍結したフィレは弱含みでAシーズン推移している。米・ロの品質の差はあるが、アラスカ産1回凍結の製品価格も、今後下振れする可能性がある。ロシア産フィレは中国などで2回凍結加工することが多い。
 米国のすり身生産者は「日本のすり身加工業者と同様に、米国でもドル高、人件費の高騰などがあり、経営環境は厳しい。ドル高は輸出業者に痛手。米国の白身魚加工産業はかつて大きな利益を生み出していたが、いまでは非常に厳しくなってきた」と実情を語っている。