部品不足の影響いつまで、納期遅れ解消せず
フクシマガリレイは製品値上げへ

 世界的な半導体不足や東南アジアでのコロナ感染拡大による部品供給の遅れが昨年から続き、食品機械関連メーカーにも影響が広がり始めた。受注停止や納期延期に迫られているほか、原油高による樹脂製品などの価格高騰にも直面しており、業績への下押し圧力が強まっている。

 フクシマガリレイは業務用冷凍冷蔵庫や冷凍冷蔵ショーケース、製氷機などの主力製品に加え、冷媒配管工事や電気工事を対象に価格改定を行うと1月24日発表した。冷凍冷蔵ショーケースや配管工事は2月1日、業務用冷凍冷蔵庫などは4月1日からの受注分に対して価格を一律10%値上げする。

 業務用冷凍冷蔵庫の価格改定に踏み切ったのは業界で同社が初めてとみられる。これまで部品の転注や生産効率の向上による原価低減などに製販一体で取り組んできたが、「企業努力だけでは製品価格を維持することは困難」(同社)と判断した。

 一方、一部製品で停止していた受注はこのほど再開した。部品不足のため、受注が集中していた冷凍冷蔵庫などは昨年10月末から受注を一時停止していたが、台数を限定して1月21日再開した。同社は2022年3月期の上期(4〜9月)は大幅な増収増益だったが、受注停止の期間が3カ月間に及んだことに加え、一部製品で納期遅れが現在も続いており、下期の業績に対する影響が注視される。

検査機、温度監視システムにも影響

 部品不足の影響は冷凍冷蔵庫メーカー以外にも広がる。ある検査機メーカーは「樹脂素材の供給停止でコネクタ(端子)が入手困難になり四苦八苦している」(担当役員)。受注残高は増えているが、今後製品がつくれない事態に見舞われる懸念が大きいという。

 納期遅れはすでに発生しており、同社の場合、これまで3カ月間で納めていた製品が5カ月間に延びた。半年先を見越して部品確保に走り、在庫は積み上がっている。担当役員は「部品の供給不足がいつ落ち着くのか正直わからない。技術部の話では2〜3年は続くとみている」と語る。

 米国製の半導体を使っている温度監視システムの開発メーカーも苦境に立つ。同社の社長は「大変な状況にある。当社は取引量が多いのに、それでも入ってこない。製造が止まっている」と語る。1年前に発注した半導体がまだ入ってこない状況という。在庫は確保しているが「今後も続くようだと厳しい」(同社社長)。

 食品容器の洗浄機メーカーでは2021年12月期の業績にマイナス影響が出た。同社の社長は「昨年9月までは計画通りに推移していたが、後半から半導体などの部品不足で大打撃を受けた。12月までに納品できない案件が多くあり、いわゆる『期ズレ』が発生した」と語る。
 
 半導体のほかにもタッチパネルやサーボモーター、ブレーキユニット、樹脂製の押しボタン、大型ブロワ用のモーターなどが入ってこないという。「工場は少なくとも今年5月の連休までフル稼働が続く予定だが、この先も部品が入ってこないと計画に変更が生じる」と心配する。

半導体不足は需給ギャップが要因

 世界的な半導体不足がなぜ起きたのか−−。JETROのリポートによれば、5G(第5世代移動通信システム)の普及拡大やリモートワークの広がりによるPC購入の増加、データセンターの拡充などによって需要が急増した一方、コロナ禍による工場の操業停止、国内外での自然災害、火災事故などによる混乱が供給不足に追い打ちをかけたとされる。

 安定供給に向けたサプライチェーンの強化が国内外で今後進むが、旺盛な半導体需要が供給を上回る状況は当面続くとしている。
 
 日本銀行も1月18日に発表した「展望レポート」の中で「半導体等のデジタル関連財の需給ひっ迫が続くもとで、わが国経済と繋がりの深いアジア地域等で感染が拡大した場合、サプライチェーン障害を通じてわが国企業の輸出・生産活動が下押しされる可能性がある」と指摘し、経済のリスク要因の1つに挙げる。2021年度の実質GDPの成長率は+2.8%との見通しを示し、昨年10月時点の+3.4%から引き下げた。

 今回の部品供給不足の問題はサプライチェーンのグローバル化が進む一方で、部品の調達先が海外に偏るリスクを浮き彫りにした。ある機械メーカーの担当者は「調達コストは増えるだろうが、部品の仕入先を今後国内に戻す動きもあり得るのでは」と語り、国内回帰の可能性を指摘する。