前川製作所、脱フロンの見学会を開催
前川製作所は東京海洋大学、日かつ漁協、開発センター、マグロ船主らマグロ漁船の関係者を招き、フロンを使わないアンモニア／二酸化炭素冷媒の冷却装置と、空気冷媒の最新型冷凍装置による超低温冷蔵倉庫の見学会を静岡県でこのほど開催した。
これは地球環境保全のためフロンが使用できなくなるほか、既存のフロンには多額の環境税が課せられるため、代船建造やリニューアル改造で超低温設備となるマグロ漁船で早急の脱フロン設備への転換が必要となっているため行なわれた。
冷凍食品工場のアンモニア／二酸化炭素冷媒装置
当日は、静岡市内の冷凍食品工場を視察した。この冷凍食品工場はスパイラル冷凍機の冷却装置として、フロンを使わないアンモニア／二酸化炭素冷媒の新しいシステムを６年前に導入した。装置は130ＫＷの冷凍機７台を設置している。
この装置は工場内の機械室に設置されている。前川製作所オリジナルのスクュリュー冷凍機により、アンモニアを１次冷媒とした冷却装置の蒸発器で低温の液化二酸化炭素を作り、これを熱交換器によって、二酸化炭素を２次冷媒としている。これを冷凍加工場にあるスパイラル凍結装置に配管している。
二酸化炭素を２次冷媒とするのは、万が一、加工場に冷媒が漏れても安全を保つため。これがこのシステムの大きな特徴となっている。冷媒装置の温度は、マイナス45℃程度までとなっている。マイナス45℃以下の温度にすると、冷媒の二酸化炭素はドライアイスになってしまい冷媒の機能を失う。装置の温度はマイナス35℃となっている。
また、この冷凍食品工場では、外部に据え置き式（ユニット式）のアンモニア／二酸化炭素冷媒の冷却装置（製品名＝ニュートン3000）２台をこのほど設置し、11月から稼働する予定。この新型の装置はコンパクトに加え、従来機よりも性能が20％アップしている。
空気冷媒による最新型冷蔵倉庫
深澤冷蔵のパスカルエア装置
一行は空気冷媒による最新型冷蔵倉庫を設備した焼津市の深澤冷蔵を午後訪問し、同社の深澤正門専務の案内で設備を見学した。
深澤専務によると、空気冷媒による冷却装置の開発は前川製作所が新エネルギー開発機構（ＮＥＤＯ）の助成を受けて開発を進めてきたもの。この実験プラントを４年前に深澤冷蔵の既存の冷蔵倉庫に設備し、フィールドテストを行ない、さらに実用装置での試運転を行い、新しい8000ｔの超低温冷蔵倉庫に設置、昨年12月より稼働させている。
空気媒体の「パスカルエア」を視察
深澤専務から説明を受けるマグロ漁業関係者
前川製作所の空気冷媒による最新型冷凍装置は、商品名「パスカルエア」。深澤冷蔵では６台の「パスカルエア」を設置し、8000ｔの超低温冷蔵倉庫の半分の各4000ｔを３台ずつで冷やしている。
この空気冷却システムは、冷蔵倉庫内の空気を直接断熱圧縮・断熱膨張することで空気の温度を低下させ、超低温領域を創出するシステム。心臓部となる装置はダーボ圧縮機・膨張機。超低温冷蔵倉庫内のマイナス60℃の冷気をダクトで吸い込み、冷熱回収交換器を通してターボ膨張機に送る。これによりマイナス80℃の冷気となり、これをダクトで冷蔵倉庫内に送る。
「パスカルエア」の特徴は�…仰祺肯琉茵淵泪ぅ淵�50〜100℃）で従来の蒸気圧縮式フロン冷凍より、最大50％の省電力、ＣＯ２排出量を削減する、��運転音が静かで、完全オイルフリー化とシールレス化により、機械室の汚れが少ない、�Ｎ簀泙篭�気のため周辺への環境汚染がない、�ざ�気がほぼ大気圧でダクト搬送される低圧運転のため法規制（高圧ガス保安法）の適用外、�ジ貌盒�気を直接冷却するため庫内クーラーや冷媒配管が不要で設備費が安価、�κ歇蘚生，�容易で長寿命、��膨張機で発生する動力を回収し、圧縮動力に使用するため高効率――など。
炭素税でフロン課税では、補充で数千円に
2020年のフロン全廃に向けて、炭素税の導入が政府で検討されている。この試算によると、Ｒ22で１��3620円、Ｒ404Ａで7841円、Ｒ507Ａで7970円となっており、フロンガス自体の価格もここに来て大幅に上昇しており、冷蔵倉庫やマグロ漁船の冷蔵庫にフロンガスを補充するには、数千万円の費用がかかる計算となる。そこで前川製作所では「脱フロン対策を急ぐ必要がある」としている。