おいしく凍結し、品質をおとさず解凍
菱豊フリーズシステムズ 専務取締役 庄司晃氏
菱豊フリーズシステムズのプロトン凍結機は解凍時のドリップが少ない冷凍機として話題を集めている。これまで、地方ユーザーが多く、首都圏では苦戦していたが、ここ数年、都内のホテルや仕出し店などにも導入が進んでいるという。庄司晃専務に話を聞いた。
庄司専務
――プロトン凍結機の開発の経緯は？
庄司 当社はもともと大型冷凍冷蔵やストレートフリーザー、スパイラルフリーザーを主体に販売していました。しかし、競争が激しく、ここ20年位でかなりフリーザーメーカーが減ったと思います。そんな中で特徴を出すために開発したのがプロトン凍結機です。また凍らせたら解凍が必要になります。そこで解凍機も製造販売しています。プロトン凍結機、解凍機ともに特許を持っています。
プロトン凍結機は小型機種がメイン。ストレートスリーザーやスパイラルだと時間当たり300kg以上の凍結能力になりますが、プロトン凍結機はバッチ式で150kg前後が中心です。
小さな氷結晶、細胞が壊れない
――販売先は？
庄司 顧客は特に品質を第一に求める、なるべく添加物を使用しない安心安全な商品アイテムのユーザーが多いです。。
プロトン凍結機は�ゞ囘�磁束密度環境��電磁波発信環境�Ｎ簓�の３つをハイブリッドした凍結機で、凍結時の氷核生成にはたらきかけて、氷核を多数生成し、小さな氷結晶を作ります。細胞が壊れないので、解凍時にドリップが少く、食感の再現や風味、離水感などが改善されます。水分が多い水産物や温度管理が難しい米飯類において他機種との明確な差が出ます。
大量生産の食品メーカーは解凍時の問題を添加物で克服しようとします。当社の機器は添加物を使用せず凍結・解凍ができる。添加物は複合、多年摂取に対する安全性が確認されていないので、安全面を求めているユーザーや生協関連においてプロトン凍結機を使うという事になります。導入実績が特に米飯の取り扱いがあるところ。奈良県では柿の葉寿司を製造している会社に多く採用頂いています。授産施設などにも採用されています。
――解凍機は？
庄司 凍結能力が時間当たり15kgという小型プロトン凍結機はホテルや仕出し店などで採用が多いのですが、特に米飯を取り扱っている顧客では、小型解凍機「不思議なきのこ」を一緒に導入する例が増えてきました。例えば、立食パーティーなどで大量の寿司を提供する場合、朝から準備して提供すると、ネタが乾燥したり、変色したりする。
当社の解凍機は10〜60分でおいしく寿司を解凍でき、品質が高いまま提供できます。
――解凍機の取り扱いは小型だけ？
庄司 潜熱を利用して解凍速度をあげたプロトン解凍機を販売しています。
ハムやソーセージの製造には輸入の冷凍肉を使うことが多いのですが、大きいものだと60ポンド（約27kg）の肉の塊で、溶けにくい。それを水解凍すると、排水処理施設の負担となり、衛生的にも良くない、夏冬で解凍状況が変わるなど安定しません。
通常は２、３日かかる27kgの肉が一晩で解凍できます。ある食肉製造メーカーではソーセージ製造工程で原料を１日50t使用しますが、当社の解凍機を使用して解凍した原料肉を午前中に50t使い切る。昼からは翌日使う分を機内にセットし、夕方スタートして帰宅する。一晩で解凍するからできるオペレーションです。解凍に時間がかかると原料庫、解凍エリアなど、すべてのスペースが、２、３倍必要になります。
解凍機でも品質を高める工夫
――自然解凍の方法もあるが。
庄司 ここ１、２年、解凍機の引き合いが増えています。解凍は時間さえかければ自然解凍できるので、解凍機に資金を投入するユーザーは少なかった。しかし顧客の衛生管理に対する意識が高まり、解凍プログラムの設定温度をなるべく低く抑えたいという要望も見られます。
最初の１時間くらいは温度が高めの方が効率よく解凍できるのですが、その１時間ですらあまり温度を上げたくない傾向があります。解凍プログラムの提案もやり取りが複雑になってきました。
食肉加工メーカーは前日作業で原料を夕方、機械にセットして、翌朝使用する。例えば、鶏肉は約３〜５時間で解凍できます。そこでその後冷蔵に切り替わるプログラムになっている。
当社はいきなり解凍せず、使用する３時間前まで−５〜−８℃で冷凍保管する。そうすれば冷蔵保管する時間が短くて済む。先に解凍して朝まで冷蔵保管するとドリップが出続け、菌も増えますが、直前解凍ならそのようなリスクを低減できます。数多く解凍を手がけてきたから出てきた思想です。
今年はこの大型解凍機を展示会で積極的にアピールしていきたいと思っています。解凍機は専業メーカーがいない。当社の解凍機は特許を取得しており、コストもこなれた価格を出せるようになってきましたので、解凍機のトップメーカーをめざします。
――解凍機の実際の使用場面は？
庄司 食材の種類や後工程で解凍時間や解凍プログラムが変わります。我々は製造現場に入り込んでヒアリングし、条件を設定するので、解凍機はオーダーメイドになることが多い。狭い場所で水解凍していたところに、短時間で設置してほしいなどの要望にも、ケースバイケースで対応しています。
昨今、食品工業内で工事するのはとても難しい。異物混入でも起したら大変なことになるので、日中は作業できない、養生をきちんとしてもらわないと困る、土日で作業し欲しいなど、顧客の要望に対応できないと製品が売れませんし、大手企業とは取り引きできません。機械性能だけでなく、現場の工事の管理能力が求められます。食品工場での工事管理には自信があります。
大手食品メーカーと取り引きすると求められるレベル、管理水準が高い。そこで培った技術は機械装置の色々な部分に反映して、一つ上の装置の開発につながるので、大手食品メーカーとの取り引きは切らさないようにしています。
ユーザー間のネットワークで新ビジネスも
――機械を販売しているだけではない。
庄司 当社は機械メーカーですが、当社の機械を購入した産地や加工食品メーカーをそれぞれ結んで、ネットワーク化する仕事もあります。
取り組みの一環として、グループ会社のプロトンダイニングが沖縄に冷凍食品を製造するアンリッシュ食品をオリオンビール様と連携して立ち上げました。商品は大手百貨店に納めています。昨年12月からマレーシアの大手百貨店で冷凍ショーケースに124品の商品を陳列し、イートインも持ち帰りもできる店を構えて、商品を沖縄から出荷しています。沖縄の食材や日本全国のプロトン凍結機ユーザーの原材料を使用しています。
――競合は
庄司 品質にこだわるユーザーが多いので価格面での競合は少ないです。メーカーとして多くの方に使っていただける価格で販売しなければならないと考えています。
――対策は？
庄司 昨年７月に沖縄に立ち上げたプロトン凍結の食品工場、アンリッシュ食品は大きな倉庫内に、パネル構造で食品工場にしました。まだ隣が空いています。そこに３月をめどにプロトン機器の製造工場を立ち上げます。もともと工場を持たないスタイルで営業してきました。大型機種を扱っている分には問題なかったのですが、ここ数年は小型機種が増えてきたので、奈良県内に組立工場を確保していました。販売台数の多い機種から順次沖縄に移管します。輸送、仕入れの問題で割高にはなりますが、将来的には海外も視野に入れており、沖縄で生産することにしました。まずは、プロトン凍結機「PF-15A」と解凍機「不思議なきのこ」をブラッシュアップして、量産し価格を下げて販売できるようにしたいと思っています。
――保守メンテナンスは？
庄司 前職で冷熱系設備工事を経験していたメンバーが多いので当時の協力会社と連携し対応しています。さらに強化すべく、小型機器の配送／メンテナンス会社との連携もでき、搬入据え付け、メンテナンスと同時に合理化を進めています。